日本電子は、集束イオンビーム加工観察装置(FIB)「JIB-4000PLUS」を開発し、販売を始めた。TEM(透過電子顕微鏡)などで行う試料観察に必要な、前処理の作業効率を高めることが可能となる。
日本電子は2019年1月、集束イオンビーム加工観察装置(FIB)「JIB-4000PLUS」を開発し、販売を始めると発表した。TEM(透過電子顕微鏡)などで行う試料観察に必要となる前処理を自動化でき、作業効率をさらに高めることが可能となる。
材料のナノスケール組織制御やパワー半導体、CMOSセンサーの開発、製造工程では、SEM(走査電子顕微鏡)やTEM(透過電子顕微鏡)、STEM(走査透過電子顕微鏡)などを用いて、作製した試料の表面や内部の観察を行う。このための前処理にFIBが利用される。
FIBは、加速したGaイオンビームを集束させて試料に照射することで、試料表面のSIM(走査イオン顕微鏡)像を観察したり、ミリング加工、カーボンやタングステンなどのデポジションを行ったりすることができる。ただ、現行の装置だと、前処理には高度なスキルを必要とし、加工に時間がかかるなど、課題もあった。
JIB-4000PLUSは、これらの課題を解決した。その1つが新たに開発した自動TEM試料作製機能「STEMPLING」(オプション)である。STEMPLINGを搭載することで、複数のSEM、TEM、STEM観察に必要な試料を無人で、連続的に自動作製することが可能になるという。この機能によって、作業者の高度なスキルは必要なくなり、夜間などに大量の試料を作製することができる。
もう1つはハイパワーFIBカラムを採用したことである。イオンビームの最大電流値は標準仕様で60nA(30kV時)だが、オプションにより最大電流値を90nA(30kV時)まで拡張することができる。これによって試料作製の時間短縮や、直径100μmを超える広い領域への対応を可能にした。
さらに、三次元観察を行うための連続スライス断面観察機能を標準で搭載した。この結果、シングルビームFIBでありながら、SIM像による三次元観察を可能とした。オプションの三次元再構築ソフトウェアを活用すると、収集した断面画像を三次元画像に再構築することができる。
この他、回路修正などに有用なCADナビゲーションシステムや、特殊形状の加工に有用なベクタースキャンシステムなど、さまざまな用途に適用できるアッタッチメントを用意した。また、FIB加工とTEM観察の繰り返し作業を容易にするため、標準装備のバルク試料モーターステージに、TEM用のチップオンホルダーを直接挿入できるサイドエントリーゴニオメーターステージを追加することが可能である。
JIB-4000PLUSは加速電圧が1〜30kV、倍率は200〜30万倍(視野探し時は60倍)、像分解能は5nm(30kV時)。最大試料サイズは外形28mm(高さ13mm)と外形50mm(高さ2mm)である。本体標準価格は4600万円より。同社は年間20台の販売を見込む。
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