1976年にIntelで開発された製品のうち、最も重要だと思われるのが、マイクロコントローラー「MCS-48」だ。MCS-48の3つのファミリーを取り上げる。
Intelの公式文書である「年次報告書(アニュアルレポート)」をベースに、Intelの創業期の活動を創業年(1968年)から1年ずつ記述する連載の第18回である。前々回から、創業9年目である1976年の業績や活動などを紹介している。前々回は、1976年の業績をご報告した。前回は同年の主な出来事をご紹介した。今回は、1976年に数多く開発された新製品の中から、最も重要だと思われる製品「MCS-48」ファミリーの概要をご説明する。
「MCS-48」ファミリーは、Intelにとって初めての「マイクロコントローラー」である。Intelがそれまで開発してきたマイクロコンピュータ製品は「マイクロプロセッサ」だった。「4004」や「8008」「8080」などは全てマイクロプロセッサである。
マイクロプロセッサを使ったシステムと、マイクロコントローラーを使ったシステムでは、ハードウェアの構成が大きく異なる。マイクロプロセッサを使ったシステムでは、ユーザーがROMやRAMなどのメモリと入出力ICを別に用意し、マイクロプロセッサとプリント基板を介して接続する必要がある。システムは大きく、高価になる。
これに対してマイクロコントローラーでは、プロセッサ(CPU)とメモリ(ROMとRAM)、入出力回路を1個のシリコンダイが内蔵する。すなわち、シングルチップでシステムを構成できる。システムは小さく、安価になる。
もちろん、それぞれにトレードオフの関係が生じる。マイクロプロセッサを使ったシステムでは、ROMとRAM、入出力ICをファミリー製品や互換品などから選択する。設計の自由度が大きい。マイクロコントローラーを使ったシステムでは、ROMとRAMの記憶容量と、入出力のポート数はあらかじめ固定されている。設計の自由度はあまりない。
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