Malladi氏は、5Gでは、24GHz以上のミリ波帯、1G〜6GHzのミッドバンド、1GHzよりも低いローバンドの3つ全てうまく使い切ることが重要だと語る。「ミリ波帯はブロードバンド向け、ミッドバンドはバランスがよいので幅広いアプリケーションに使用でき、ローバンドは広いカバレッジを実現できる。さらに、免許不要の周波数帯にも5Gが適用されていくだろう」(同氏)
ただ、ミリ波帯については「モバイル向けで本当に使えるのか」という懸念と疑問の声が今でも根強い。Malladi氏は、「固定ワイヤレスには可能かもしれないが、モバイルには難しいという声をよく聞いている。特に、スマートフォンにミリ波通信を搭載するのは無理だと批判を受けてきた」と述べる。「だがQualcommは、問題を確実に解決してきた。サブ6GHzだけでなくミリ波もサポートしているスマートフォンが既に商用展開されていることが、その証しだ」(Malladi氏)
Qualcommは、5Gモデムだけでなく、アンテナモジュールも開発している。端末メーカーが容易に5Gを搭載できるようにするためだ。サブ6GHzとミリ波両方をサポートするレファレンスデザインも提供しており、日本での提供開始に向けても取り組んでいる。
Malladi氏は、5Gの新しいアプリケーションについても言及した。
Malladi氏は「屋外だけでなく、屋内への展開も重要な要素になる」と述べる。まず注目されているのがCPE(Customer Premises Equipment)である。家庭内ブロードバンドの“ラストワンマイル”をケーブルから無線(5G)に置き換えるもので、米国のVerizonなどがサービスを発表している。固定ワイヤレスを、より効率よく実装できるようになる。
5Gのミリ波とWi-Fiを組み合わせたエンタープライズネットワークも、重要なアプリケーションだ。米国カリフォルニア州にあるQualcommのオフィスに、Wi-Fiルーターに加えてミリ波の基地局も置いてみたところ、社内の多くのエリアで5Gbps以上のスループットを得られたという。
さらに、低遅延という利点を生かせば、複数の拠点にいる従業員がAR(拡張現実)グラスを使って、あたかも一緒に作業しているかのような体験も得られるとMalladi氏は述べる。「Qualcommはこの分野向けにさまざまな実証実験を行っている。期待しているアプリケーションだ」(Malladi氏)。その他、製造ラインの自動化や自動車のV2X(Vehicle to everything)などを紹介した。
なお、記者説明会では米中貿易摩擦やHuaweiに関する質問も相次いだが、Malladi氏はそれらには一切回答しなかった。
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