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InfineonのCypress買収は“弱点の克服”を狙う一手日本でのシェア拡大も(2/2 ページ)

» 2019年06月04日 14時30分 公開
[竹本達哉EE Times Japan]
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無線通信ICで、IoT向け製品群強化

 車載向け以外領域でも、製品の競合はほとんどなく、相乗効果が期待できる部分が複数ある。例えば、IoTエッジ端末に対応する無線通信IC事業が加わる点だ。

 NXPやSTMicroelectronics、ルネサス、Texas Instrumentsといった競合は、IoTエッジ端末に必要な半導体デバイス製品を包括的に取りそろえ“ターンキーソリューション”として販売するビジネスモデルを強化している。その一環として、各社ともに、IoTエッジ端末に不可欠な無線通信IC製品を強化している。

 そうした中で、Infineonは2010年に、当時不採算事業だった携帯電話機用モデムチップを主力にした無線通信事業をIntelに売却している。この売却事業には、Wi-Fi用ICなども含まれており、無線通信ICは、産業機器などを含むIoT市場全般を狙う上でのInfineonの弱点となっていた。1チップでWi-FiとBluetoothに対応する「コンボチップ」などIoT端末向け無線通信用ICを持つCypressの買収により、この弱点を一気に克服できる。他にも、産業機器や白物家電などのユーザーインタフェース用マイコンなども買収により補完されることになる。

Infineonでは、Cypress買収により、競合を上回る製品構成が整うとしている (クリックで拡大) 出典:Infineon Technologies
買収に伴い世界半導体市場シェアで8位に、車載半導体市場では首位に浮上するとする。また32ビットマイコン市場でも、現状の5位から4位に上昇するという (クリックで拡大) 出典:Infineon Technologies

懸念は、厳しくなる規制当局の審査

 Infineonにとって、Cypressは、出遅れていた大小さまざまな領域を埋めることのできる格好の相手に見える。ただ、このInfineonにとって理想的な買収が、完了するかどうかは、まだ余談を許さない状況だ。なぜなら、半導体メーカー間の大型M&A案件では、このところ、破談になるケースが相次いでいるためだ。

 例えば、QualcommによるNXP Semiconductors買収が中国当局の承認を得られず、破談している。また、Infineon自体も、米CreeとCreeのパワー&RF事業部門を買収することでいったんは合意したが、米国当局が安全保障上のリスク懸念を表明したことから、買収は成立しなかった。

 半導体メーカー間での大型のM&Aが続き、各国規制当局の審査が強化されている傾向にある。特に、米国政府が自国企業に対するM&Aを制限する例が散見される。米国当局が米国に本社を置くCypressの買収を認めるかどうかが、まずはカギを握りそうだ。

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