筆者としては、2020年に市場に投入される5Gスマートフォン出荷台数全体のうち、ミリ波をサポートする端末がどれだけあるのかを知りたい。Qualcommは2018年7月に、ミリ波対応モジュールを“慌てて”市場に投入したものの、ほとんど使われなかった。Qualcommはその7カ月後に小型版モジュールを発表したが、その大半は、2020年に新しく発表される携帯端末の登場を待ちながら、売れ残っているという状態になるだろう。
EE Timesの読者たちに向ける2020年のスマートフォン関連の話題は、「スマートフォンメーカーが、どの帯域向けにどのRFフロントエンドを選択したか」という内容が多くなるだろう。Gartnerのモバイルおよびコンシューマーチップ担当アナリストであるJon Erensen氏は、「5Gミリ波RFフロントエンドは、4G端末と比べてコストが2倍に上昇する可能性がある。プラス面としては、メモリの価格サイクルが低い段階にあるため、融通が利くという点が挙げられる」と述べている。
環境によっては、ミリ波帯は数ギガビット/秒のデータストリームを提供できる可能性がある。しかし、その通信速度を維持するためには、ユーザーは自分の端末を最も近くにある基地局に向ける方法を学ぶ必要があるだろう。
現在、AT&TやVerizonのエンジニアたちでさえ、28GHz帯以上の周波数帯域において、信号の伝搬や反射などへの対処の仕方が、ようやく分かるようになってきたという状況だ。筆者はいつも、自分のLTEスマートフォンで、動画配信サービス「Netflix」の映画を鑑賞している。これ以上のデータ転送速度は必要なのだろうか?
筆者は、多くの人々と同じく、Appleがいつ自社開発の5Gチップを自社端末に搭載するようになるのかにも興味がある。Appleは、Intelのセルラーモデム事業を買収する以前から、Qualcommの本拠地である米国カリフォルニア州サンディエゴにおいて、セルラーエンジニアを積極的に採用していたからだ。
筆者としては、Appleのベースバンド/RFチップは、2021年に発表される第2世代の5G対応「iPhone」に搭載されるのではないかとみている。だが、ベースバンドからRFまで全体的につながるには、恐らくもっと時間がかかるだろう。このため、AppleがQualcommとの間で締結した数年間に及ぶ契約は、3年目から内容が次第に大幅に縮小されていくとみられる。
AppleがIntelのRF専門家やIP(Intellectual Property)を確保するために、どれくらいの金額を支払ったのかは不明だが、巨大企業Intelは(背中に矢を受けながらも)WiGigを先駆的に手掛けた企業の1社であるため、60GHz帯のミリ波に関する経験が豊富なことは間違いない。
GartnerのEvensen氏は、少し懐疑的な見方をしているようだ。
同氏は、「膨大な数のメーカーが、モデム開発に挑戦して失敗している。中には、社内プロジェクトとして取り組んでいたメーカーもある。一流メーカー各社が数年間をかけて獲得してきた技術を、一度に実現しなければならない」と述べている。
Evensen氏は、「5GベースバンドとRFフロントエンドの他にも、2020年に市場に投入されるスマートフォンにおいては、イメージングやAI(人工知能)プロセッサに注目すべきだろう。ユーザーにとって、カメラはかなり重要なので、ごく少数の意欲的なIPプロバイダーたちがデザインウィンを奪い合う可能性がある」と付け加えた。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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