2019年7月23日付掲載の記事「90nmプロセスの多用途展開を加速するMaxim」は、興味深い内容だった。Maximは大手アナログICメーカーとして著名なIDM(垂直統合型)企業だが、ファウンダリメーカー(以下、ファウンダリ)の活用に関しても積極的だと聞いており、筆者はこの記事を読み「なるほど」と合点がいった。そこで、今回はファウンダリの活用方法について、私見を述べたいと思う。
2019年7月23日付掲載の記事「90nmプロセスの多用途展開を加速するMaxim」は、興味深い内容だった。Maximは大手アナログICメーカーとして著名なIDM(垂直統合型デバイスメーカー)だが、ファウンダリメーカー(以下、ファウンダリ)の活用に関しても積極的だと聞いており、筆者はこの記事を読み「なるほど」と合点がいった。そこで、今回はファウンダリの活用方法について、私見を述べたいと思う。
ファウンダリは半導体の製造を請け負う会社なので、半導体メーカーを顧客とするのが通常である。特にロジックIC分野ではQualcomm、Broadcom、NVIDIA、MediaTek、Xillinxといったファブレスメーカーが高いシェアを誇っており、これらの企業はTSMCなどのファウンダリに100%製造委託するビジネスモデルが定着している。概してロジックIC分野では、設計と製造を分業した方が、より事業効率が良いという事例が多く見られ、ファブレスとファウンダリのWin-Win関係が成立しやすい分野、と言うことができる。
これに対してメモリ、アナログIC、パワーデバイスの分野では、設計技術と製造技術の擦り合わせが重要とされており、IDMが高いシェアを誇っている。事実、これらの分野にはファブレス大手は存在しない。だから自社で設計したら製造も外部に委託せずに自前で行う方が望ましい、と思われがちであるが、Maximのファウンダリ活用戦略を見てみると、あまり画一的な考え方では選択肢を狭めてしまうようだ。
ただし、上記の記事にもある通り、アナログICにおいて設計技術と製造技術の擦り合わせは不可欠であり、製造委託する際にこれをどう実現するかが重要なポイントとなる。ここで問題になるのが、以前から設計も製造も行ってきたIDMの「自前技術へのこだわり」であろう。アナログICに限らず、日系企業の多くは自社製造プロセスへの「こだわり」が強すぎて、外部への製造委託時にさまざまな障害が表面化するケースが多い。そんなに「こだわり」があるなら自社で必要な設備投資をすべきなのだが、そこにカネは使えない、でも「こだわり」は捨てられない。これは戦略ではなく、ただのワガママだ。
日系半導体メーカーの全てがそうだ、というわけではないが、社外のリソースをいかにして使いこなすか、という点について、スタンスを根本的に見直した方が良い企業が多いことは確かである。上記の記事で紹介されているような、Maximの委託戦略から学ぶべきことはたくさんあるだろう。
昨今では半導体メーカーだけでなく、機器メーカーがファウンダリを活用する事例も増えているようだ。車載や産業機器の分野では、汎用的なアナログICではなく、特定用途に特化したカスタムICを必要とする場合が少なくない。そんな場合は半導体メーカーにASICを発注するのが通常だが、アナログASICに積極的に対応してくれる半導体メーカーは意外なほど少ないのが実情だ。そこで、機器メーカーとしては、デザインハウスを仲介させることでファウンダリに製造を委託する、といった選択肢が浮上する。
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