そして、アクセス管理用途に加えて拡大しているのが「決済用途」だ。指紋認証によってプリペイド式で支払いを行う用途で、既に米国ではスポーツジムや大学のカフェテリアで導入が進んでいるという。特にスポーツジムでは、財布などの貴重品をロッカーに入れることになるため、何も持たないで利用でき、また、接触しなくてよいというMorphoWave Compactのメリットは大きいだろう。
アイデミアは、2020年から始めた日本での市場展開も、民間のアクセス管理用途での拡大を進めつつ、決済用途などのニーズも探っていく方針だ。根津氏は、「アクセス管理用途では、すでに多くの引き合いがある」と説明。2020年4月には、デジタルガレージの新本社に日本で初めてMorphoWave Compactを導入したことも発表している。
同社は日本市場で既に接触型の指紋認証デバイスも提供してきたが、「特に日本は衛生面での意識が高く、人が触ったものを触れるのに抵抗を感じることが多い。スキャナーの汚れを掃除する手間などもあり、従来の接触型指紋認証デバイスはなかなか普及が難しかった」といい、根津氏は、「われわれの唯一無二のデバイスであるMorphoWave Compactをできるだけ強く推していきたい」と意気込んでいる。
また、2019年末にはサッカーJ2リーグ「アビスパ福岡×鹿児島ユナイテッド」で、試合会場の旧レベルファイブスタジアム(2020年3月からベスト電器スタジアム/福岡市)にMorphoWave Compactを導入し、スタジアムへの入場と飲食物の受け取りという実証実験も実施(米国でもTrusted Fanというサービス名で同様の実証実験を行っている)。根津氏は、「顧客の待ち時間や混在緩和ができるようであれば、この用途も有効な手段になるだろう。MorphoWave Compactにはまだ、いろいろな用途の可能性があると考えている。顧客のニーズをくみながら、さらに広い用途で提供していきたい」としている。
「生体認証デバイスは、これから大きく伸びる市場だと考えている」と語る根津氏。生体認証技術については、スタートアップを含め多くの企業が参入しているが、「われわれのように指紋、顔、光彩認証などさまざまな認証方式に対応するデバイスを有している企業はグローバルでも3、4社程度だ。空港の例でも、シンガポールのチャンギ空港では顔認証デバイスを導入する一方で、ドバイやアブダビでは光彩認証を導入するなど、ニーズに合わせた認証形式を提供できるというのが、非常に大きな強みとなるだろう」と認識を示した。
同社は、既に生体認証デバイスを500万ユニット出荷した実績を持つが、今後も「唯一無二のデバイス」(根津氏)であるMorphoWave Compactを含め、用途に応じた認証形式のデバイスおよびソリューションの提供を強みとして市場での立ち位置を確立し、「生体認証デバイスをわれわれの軸の一つに据えていきたい」(根津氏)としている。
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