世界的なサプライチェーンの回復と消費者信頼感の向上、さらに最近のゲーム技術の進歩によって、2020年上半期には新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行拡大による損失が払拭される可能性がある。少なくともある半導体アナリストは、半導体市場の先行指標となるGPU市場がV字回復すると予測している。
世界的なサプライチェーンの回復と消費者信頼感の向上、さらに最近のゲーム技術の進歩によって、2020年上半期には新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行拡大による損失が払拭される可能性がある。少なくともある半導体アナリストは、半導体市場の先行指標となるGPU市場がV字回復すると予測している。
アナリストのJon Peddie氏は、サプライヤーネットワークの回復や、ゲーマーおよびPC購入者からのGPUの繰延需要などのポジティブな指標を挙げて、「GPUの回復は、緩やかだが着実に進む」と述べている。
消費者信頼感指数は、2020年5月下旬以降、上昇傾向にある。特にリモートワークを続けられる環境にある人に関して、消費者信頼感指数はCOVID-19の流行前と変わらず、将来の行動に対する予測因子として信頼性が高い。Peddie氏は、また以前のように買い物をしたくてたまらない人の多くが、新しい家庭用コンピュータを買いに出掛けるようになるだろうと予想している。今後、Intelのデスクトップ向け10nm CPU「Alder Lake」(開発コード名)搭載モデルなどの新機種が続々と発売される見通しだ。
また、“ステイホーム(自宅待機)”の要請によって、新たなゲーマーが生まれたことから、GPUの需要増も予想されるという。
COVID-19がパンデミックとなる前、Peddie氏は2020年のGPU売上高が-8〜+3%の範囲で変動すると予測していた。しかし、サプライチェーンの混乱に加えて自宅待機要請が出されたことから、2020年2月にこの予測を下方修正した。同氏はインタビューの中で、「2020年7月までにこの予測の上下値の範囲を2ポイントほど絞れるだろう」と説明。さらに、「2020年秋までに通常の活動がある程度戻っていれば、2020年上半期の損失は繰延需要によって十分に相殺される可能性がある」と語っている。
同氏は2020年第1四半期に関するリサーチノートの中で、「GPUは、サプライヤーがPCを出荷する前に全てのシステムに搭載されるため、従来、市場の先行指標となっている」と説明している。一方で、半導体チップベンダーは、次四半期のガイダンスを平均で9%下方修正している。Peddie氏は、「ガイダンスの修正の一部は通常の季節要因に基づいたものだがCOVID-19の影響も受けている」と述べている。
今のところ、PC用ディスクリートGPU(dGPU)の年間総出荷台数は、前四半期から5.3%減少しており、逆V字型から抜け出せていない。最大の打撃を受けたのは、AMD(前四半期比16.6%減)とNVIDIA(同13.6%減)だ。一方、Intelの四半期GPU出荷台数はわずかに増加している。
Peddie氏は、グラフィック処理の強化を活用したゲーミングのリリースが大幅に増加したことにけん引されて、GPU市場全体がここ数カ月で“危機を脱した”と確信しているという。市場の変化のもう1つの要因に、NVIDIAがレイトレーシングに注力し、同社が「映画品質のレンダリング」とする没入型グラフィックスを実現したことがある。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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