東京大学と産業技術総合研究所(産総研)、物質・材料研究機構(NIMS)の共同研究グループは、有機半導体トランジスタの高速応答特性をモデル化することに成功した。製造した有機半導体トランジスタの遮断周波数は、最速となる45MHzを達成した。
東京大学と産業技術総合研究所(産総研)、物質・材料研究機構(NIMS)の共同研究グループは2020年9月、有機半導体トランジスタの高速応答特性をモデル化することに成功したと発表した。このモデルを用いて設計、製造した有機トランジスタを評価したところ、遮断周波数は最速となる45MHzを達成した。
有機半導体は、有機溶媒に溶かしたインクを用い、印刷プロセスで製造できる。このため、柔軟性のあるデバイスを比較的低コストで製造することが可能となる。研究グループでもこれまで、厚みが約10nmの有機半導体結晶薄膜を、大きな面積に塗布できる印刷方法を開発してきた。しかも、その移動度は10cm2/Vsを超えるなど、実用レベルの性能に達しているという。
今後、有機半導体トランジスタを用いて大規模な集積回路を設計するには、各トランジスタの動的な特性を事前に予測する必要があり、このために動的応答モデルを用意していかなければならない。ところが、有機半導体トランジスタではこれまで、遮断周波数や移動度などのデバイスパラメーターと微細化度の相関が明確にされておらず、高速応答特性のモデル化までには至っていなかったという。
そこで研究グループは、既に開発済みの有機半導体結晶薄膜を大面積に塗布できる印刷方法などを活用し、数μmレベルで加工した有機半導体トランジスタアレイを試作。微細化のレベルを変えた複数の有機半導体トランジスタを用いて、デバイス構造と動的特性を系統的に解析し評価を行った。
解析結果をもとに、シリコン半導体で確立された既存モデルをベースに、有機半導体トランジスタ特有の接触抵抗による効果を取り入れた新モデルを定式化した。このモデルでは、接触抵抗の影響を考慮した上で、デバイスの微細度を表す「面積因子」を用いて、直感的に動的特性を予想することが可能となった。
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