産業技術総合研究所(産総研)とオムロンは、厚みが7μmと極めて薄い圧電薄膜アクチュエーターと、これをアレイ化したハプティクス用フィルム状振動デバイス(ハプティクスフィルム)を開発したと発表した。
産業技術総合研究所(産総研)とオムロンは2021年1月、厚みが7μmと極めて薄い圧電薄膜アクチュエーターと、これをアレイ化したハプティクス用フィルム状振動デバイス(ハプティクスフィルム)を開発したと発表した。
ゲーム機用コントローラやスマートフォンでは現在、ハプティクス用アクチュエーターとして主に、偏心モーターや圧電セラミックスが用いられている。これらは柔軟性やサイズの制約などがあり、表現可能な触覚に限界があったという。
今回は、これまで研究してきた極薄MEMS技術を活用し、圧電セラミックスを極薄化した。これにより、アクチュエーターとしての性能を維持しながら、曲面でも利用できる柔軟性を実現した。
開発した圧電薄膜アクチュエーターは、シリコン基板上に金属電極薄膜や圧電薄膜、絶縁膜などを積層した多層構造になっている。多層構造全体の厚みがわずか7μmであり、これをフィルム基板上に実装した状態でも、曲面実装が可能である。圧電薄膜に直流電圧を印加すると、アクチュエーター全体がたわみ、交流電圧を印加すると振動する。現行の主なハプティクス用アクチュエーターと比較しても、性能と柔軟性を両立していることが分かる。
開発した圧電薄膜アクチュエーターを用いて作製するハプティクスフィルムの性能を最大限に引き出すためには、アクチュエーターとフィルム基板を接合する振動伝達材料の機械特性が重要となる。そこで研究チームは、シミュレーション技術により、振動変位が最大となる振動伝達材料の機械特性を算出。この結果に基づき、ハプティクスフィルムを作製したところ、駆動電圧10Vで11μmの振動変位が得られることを確認した。
実験では、4枚の圧電薄膜アクチュエーターをフィルム基板上にアレイ化したハプティクスフィルムを用意。今回はこれに3種類のパターンで振動を与え、それぞれのパターンにおける識別率を調べた。
この結果、正答率はパターンA(上下)で51.8%、パターンB(オンオフ)で97.5%、パターンC(左右)で57.6%となった。曲面の状態でも同様の識別率となった。研究チームによれば、正答率が低いパターンAとCでは、「振動が強すぎてその違いを誤認した」結果だと分析、駆動電圧を調整すれば最適化できるとみている。また、振動のパターンを変えれば、多彩な触覚を表現できる可能性があるという。
今回の研究は、産総研センシングシステム研究センターハイブリッドセンシングデバイス研究チームの竹下俊弘主任研究員や山下崇博主任研究員および、小林健研究チーム長と、オムロンのエレクトロニック&メカニカルコンポーネントビジネスカンパニーが共同で行った。
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