中国の新興ファブレス半導体企業であるVastai Technologiesは、2回目の大規模な投資ラウンドとなるシリーズA+を完了し、5億人民元(約7700万米ドル)を調達した。Vastai Technologiesはいまだ表立った活動を控える“ステルスモード”のような状態にあるが、同社初のチップとなるデータセンター向けAI(人工知能)推論アクセラレーターを既にテープアウトしている。
中国の新興ファブレス半導体企業であるVastai Technologiesは、2回目の大規模な投資ラウンドとなるシリーズA+を完了し、5億人民元(約7700万米ドル)を調達した。Vastai Technologiesはいまだ表立った活動を控える“ステルスモード”のような状態にあるが、同社初のチップとなるデータセンター向けAI(人工知能)推論アクセラレーターを既にテープアウトしている。
Vastai Technologiesは、2020年11月のシリーズAラウンドで5000万米ドルを調達した。初期のシードラウンドの800万米ドルを含めると、現在までの資金調達の総額は約1億3300万米ドルに達する。
Vastai TechnologiesのCEOであるJohn Qian氏は、米国EE Timesとのインタビューの中で、調達した資金を同社の製品、IP(Intellectual Property)そして人材に投資する計画を明らかにした。
Qian氏は「優れた製品を開発するには、それだけ多くの資金が必要になる。前回の投資ラウンドで調達した5000万米ドルは、既存の製品の開発に投じられている。ハードウェアだけではあまり意味がなく、ソフトウェアが伴わなければならない。われわれは、顧客がより容易に当社のハードウェアに切り替えられるようにするためのエコシステムを構築する必要がある。われわれは現時点では少数のアプリケーションに注力しているが、今後はチームを編成して、顧客が自社の既存のハードウェアを当社のハードウェアに移行できるようにする」と述べた。
Qian氏によると、直近の投資ランドで得た7700万米ドルは、将来の製品を開発するために使われるという。
Vastai Technologiesが既にテープアウトしているAIアクセラレーターは、パブリッククラウドならびにエンタープライズ向けデータセンターの両方のアプリケーションに向けたものである。Qian氏によると、中国では、独自のインターネットデータセンターを所有したい企業がますます増えているという。その背景には、独自のハードウェアを制御することで、特定のアプリケーションに向けて最適化したいという狙いがある。
Qian氏は「われわれはそうした動きを大きな機会と捉えており、そこに注力したいと考えている。企業顧客は運営コストを削減したがっており、当社はそこを狙っている。もちろん、当社の製品はパブリッククラウドにも導入可能である」と述べた。
パブリッククラウド領域では、AWS、Google、Alibaba、Baiduといったハイパースケーラー企業が自社の特定のニーズを満たすためにAIアクセラレーターを独自に開発している。それでもQian氏は、Vastai Technologiesのような新興企業にとって、パブリッククラウド領域にはまだ機会があると考えている。
Qian氏は「私の見解では、ハイパースケーラー企業はまだ何らかの助けを必要としている。なぜなら、それら企業のソリューションは固有性が高く、自社のアプリケーションに合わせて作られているからだ」と述べた。
Qian氏によれば、テープアウトしたAIアクセラレーターは、いくつかのエッジアプリケーションもサポート可能だという。エッジにおいて、CPU周辺でPCIアクセラレーターとして使用でき、15Wレベルの消費電力で動作するようスケールダウンできるとしている(チップの消費電力は15〜150W)。将来的にはトレーニング向けチップも開発するかもしれないが、現時点では推論に焦点を当てるという。
Vastai Technologiesは主要拠点を中国に置く。設計拠点が上海と北京にある他、R&Dセンターがカナダのトロントにある。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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