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「コロナワクチン接種拒否」に寄り添うための7つの質問世界を「数字」で回してみよう(68)番外編(13/14 ページ)

» 2021年11月01日 11時30分 公開
[江端智一EE Times Japan]

「減らせ、スプレッダー! なろう、ターミネーター!」(シバタ医師からの4つの付録)

付録1:コロナウイルスが人の身体にダメージを与える機序について

江端要約

たとえ発病しなくても、めちゃくちゃ怖い新型コロナウイルス感染 & 自分の子どもにワクチン打つ?打たない?に対する判断基準のご提供


 詳しくは日本語の総説(参考)を読んでいただくのが一番手っ取り早いのですが、簡単に言うと、コロナウイルスは血管の内側をびっしり覆っている「血管内皮」と呼ばれる細胞にくっついて侵入します

 この血管内皮細胞にくっつくときに使われるのが「スパイクタンパク質」で、その標的は「ACE2受容体」と呼ばれています。ウイルスが血中に入り込むと、体中の毛細で血管内皮細胞にコロナウイルスが侵入し増殖しはじめ、血管の表面を破壊し、そこを修復するために微小な血栓が作られます

 脳の毛細血管のあちこちが詰まると、脳の機能が低下します。腎臓の毛細血管のあちこちが詰まると、腎臓の機能が低下します。指先に点状出血が見られることがありますが、これは指先の血管が詰まった結果を表すと考えられています。

 最重症例では全身の炎症にプラスして、脳梗塞、心筋梗塞、肺梗塞といった症状を併発することもあり生命の危機に直結します。

 しかし、軽症では細かな血管のダメージだけで終わるので、検査に大きな異常が現れず、本人にしか機能低下が自覚できないという例もあります。そしてそれが、嗅覚障害、味覚障害、ブレインフォグや倦怠感、脱毛などの後遺症の原因となっている可能性があるのではないかと言われています。

 ブレインフォグを示す患者を特殊なMRI検査で評価したこの論文では、脳の血流が低下している様子が画像によってはっきりと示されています。

 このように、コロナへの感染は、たとえ軽症で済んだとしても、脳、心臓、腎臓などの重要臓器の毛細血管に目に見えにくい傷跡を残し、全身に機能低下を引き起こすリスクがあります

 同僚の間でも、特に年齢的には死亡率の少ない若手の間では「死亡率を下げたい」よりも「端から見て客観的に証明できないレベルの高次脳機能障害を抱え込むリスクが嫌」という理由を前面に出して「ワクチンは絶対打つべきだ」という医師が一定割合で存在しました。

 自分の子供に新型コロナワクチンを接種させるかについて、医師、看護師、妻&子供経由の一般人それぞれでの意見を聞いてみるとワクチン接種への積極性は「医師>看護師>>一般家庭」という図式が成り立っているように思います。

 サンプル数が少ない(私のネットワークの範囲内)のであくまでも印象ですが、子宮頸がんワクチン接種と同じ傾向です。

 一般人にとってはワクチンに対する漠然とした恐怖と不安のほうが強いのかもしれませんが、論文や実臨床で肺が真っ白になったり脳血流が明らかに低下したりした画像を目にしていると、「あれはヤバイ」という直感的かつ根源的な恐怖と不安がふつふつと沸いてきます。

 ACE2受容体は当然ながら子供の血管内皮にも存在していますので、程度が軽かろうと検査が正常だろうと、たとえ本人が異常を自覚しなかろうと、目に見えない高次脳機能ダメージが若年層で生じないという保証はないのです。

付録2:なぜ出ない? デルタ株型mRNAワクチン

 以前ご紹介した通り、mRNAワクチンは設計変更が即座に可能です*)

*)コンピュータで設計できるワクチン「あの医師がエンジニアに寄せた“なんちゃってコロナウイルスが人類を救う”お話

 ファイザーやモデルナがデルタ株に合わせた設計変更を今後行う可能性は十分にあり、その場合にはワクチンの効果が劇的に上昇する可能性は十分にあります。

 逆に、なぜデルタ株タイプのmRNAワクチンが話題にならないのか、不思議でなりません。先進国の接種が一段落したところで発表するようにタイミングを計っているのでしょうか? 既に臨床試験目前なのでしょうか? 皆がくびをひねっています。

 「できれば3回目のワクチンはデルタ株・ミュー株混合2価ワクチンで打ちたいなぁ」と皆が言っています。もしかしたら変異が早すぎて、どの株をターゲットにするのか判断が追い付かないのかもしれません。「売れまくっているワクチンを捨ててまで新たな臨床試験を行うのばバカらしい」と、コストを渋っているだけかもしれません。真相は不明です。

付録3:スプレッダーと対になる概念の提起

江端要約

「スーパースプレッダー=バカ」と、真逆の行動変容に努める人々を、どういう名称で称えようか?


 『ほとんどの人は他人に感染させずに治癒』の図面で示したグラフにある通り、ほとんど(8割以上)のコロナ患者は次世代にうつすことなく治癒し、感染の連鎖を絶つという重要な役割を担っています。

 にもかかわらず、この役割を担っているすばらしい働きをした人を表す特定の呼び名がありません

 感染が治まるまで自宅でじっとこらえ忍ぶ彼ら彼女らがいるおかげで感染の連鎖は収束に向かうのですから、何かしらの呼称は絶対に必要だと思うのです。そこで、感染したけれど誰にもうつさずに治癒した英雄のことを敬意を込めて「ターミネーター」と呼称することを提案したいと思います

 「感染の連鎖をterminateする」という意味からです。溶鉱炉に沈むマッチョは無関係です。

江端コメント

ちなみに、通信技術の世界では、通信経路の終端装置(端っこ)を、ターミネーターと言います。


 ターミネーターにワクチン接種は必須条件ではありません。個人的にはワクチン接種、非接種でターミネーターとしての性能にT-800とT-1000ほどの差があるのでは……と思いますが、連鎖を止めることさえできれば性能差は関係ないのです。

 この用語を用いて説明すれば、コロナ感染とはすなわちターミネーター vs スプレッダーの比によって流行の拡大と収束が定義されます

 Rtの変化は「スプレッダー/ターミネーターの比に係数を掛けたもの」に近似できるはずで、その係数はワクチン接種率とウイルスの変異株の種類によって刻々と変化すると理論上は考えられます。

 Rtを1以下に抑えるためには、いかにしてスプレッダーの出現を防ぐかと、万が一感染してしまった場合に感染者の一人一人がターミネーターとして機能できるかどうかが流行の収束のカギの一つになります。

 「減らせ、スプレッダー! なろう、ターミネーター!」といった具体的なスローガンの方が、ほんの少しだけ当事者意識の向上に役立つのではないでしょうか。やること自体は結局「3密と感染しやすい5つの場面の回避する」なので、呼びかけている内容には変わりが無いのですけれど。

付録4:患者になったときに、他の人にコロナをうつしやすい時期はいつ?

江端要約

目指せ! なろう系ヒーロー 「ターミネーター」 #但し、異世界には行かない


 コロナウイルスに罹患した患者が、他の人にウイルスを最も感染させやすいのはいつなのか、という疑問に対する答えが、新たな研究で示されました。その答えは、発症の2日前から3日後までだそうです(参考)。

 なかでも発症0日目が最も高く、この期間に一次感染者と同居していた場合と、接触時間が長かった場合が高いという結果でした。

 また、無症状の患者に接した場合よりも、軽症や中等症の患者に接した場合の方が、濃厚接触者の感染リスクが高く、一次感染者が無症状だった場合にはその人から感染した人も無症状である確率が高いという分析結果でした。

江端コメント

重症から重症に、無症状から無症状に、って遺伝みたいですね。


 これらの結果は、他人にコロナをうつさないためには体調に異変を感じてから3密回避と人に感染させやすい5つの行為を避けるのでは遅く、普段から行動変容を徹底すべきだということを意味します

 また、もし体調に異常を感じたら「ただの風邪かも……」という楽観を捨てて即座に自己隔離を行う必要があることも示唆しています。

 残念ながら(幸いなことに?)、2021年10月上旬現在、検査を受けてもほとんどがコロナ陰性に終わります。都のモニタリング項目を見ると、陽性率は同年8月15日の最高24%をピークに低下し続け、10月上旬時点で3%ほどです。

 体調に異常を感じて調べてみても、97%がハズレと思うと検査する気が無くなりそうですが、是非ともめげずに、「私はスプレッダーでは無くターミネーターになるんだ!」とモチベーションを上げて、万が一のために行動していただけると大変助かります。

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