さて、ここから後半に入ります。
前半では、「政府、企業、マスコミは信用できない」→「SNSは、さらに信用できない」ということを示しましたが、であれば一体何が、コロナワクチン接種を拒絶させているのでしょうか――。
それは「恐怖」です。
未来の見えない恐怖は、人間の根源的な行動原理であり、種の存続を維持してきた、非常に大切な機能(ファンクション)です。また、政府などの巨大権力の暴走を防ぐ手段は、ロジックではなく、このような感情が非常に重要な役割を果たしてきたのです。
政府方針の指示に従う勢力と、政府の方針を拒絶する勢力がバランス良く存在することで、私たちは、国家という乗り物をうまくコントロールしてきたのです。
ただ、今回のコロナ対策に関しては、ワクチン拒否派にとっては極めて分が悪いです。ワクチンを拒絶する人が感染源になった場合、その責任を逃れる弁明ができないからです*)。
*)なお、本コラムでは「コロナなんて存在しない!」と叫んでいる人間は無視します。ここまで徹底的に無勉強で絶望的に妄信的な人間まで、なんとかしようという気持ちは、私には持てません。
さて、ここから「轢断のシバタ医師」による、「新型コロナワクチン接種を拒否するに足る説得力のある論理的説明」を試みた1万4000文字に上るシバタレポートを開示します。
私からのシバタ先生へのお願いの概要は以下の通りです。
これに対するシバタ先生の検討結果の、江端による『超』概要を先に記載します(一応、シバタ先生から、この概要でOKとのご確認を頂いております)。
では、ここからシバタレポートを公開致します。
こんにちは。轢断のシバタです。先日江端さんから「『新型コロナワクチン接種を拒否するに足る説得力のある論理的説明』についてレポートをまとめてほしい」とご依頼をいただき、やっと完成いたしました。どうぞ査収ください。
それでは、早速始めさせていただきます。
回答:無理です。頑張って考えてみましたが、期待される効果と不利益を比較する方向からワクチン接種拒否を正当化することは不可能と結論づけました。
重症化予防効果および死亡率低下効果は統計的に明らかです。また、ワクチンの副作用による死亡数は臨床試験時に報告された確率から大きく逸脱するものではありませんでした。他の一般の医薬品においても、一定の副反応や予期せぬ死亡が報告されている(参考資料)ことを思えば、副反応を理由としてコロナワクチンのみを特別に拒否するのは論理的ではありません。
また、コロナ感染はその死亡率の高さだけではなく、ブレインフォグや倦怠感の持続といった後遺症の存在(付録1)もその存在感と重要性の認知度を増しています。ですので、「死亡率がほぼゼロの世代はワクチンに意味が無い」という論法にも無理があります。
しかし、これで考察を終わってしまっては、江端さんのご期待に沿えません。ワクチン接種を拒否する人の心理には、多くの場合、論理や合理性を超えた不安や恐怖、不信感が根底にあります。
であれば、
「ワクチン拒否が他人の迷惑にならなければあとは個人の好きにすれば良いよね?」
という方向からワクチン接種拒否を正当化することを試みたいと思います。
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