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» 2021年11月01日 11時30分 公開

「コロナワクチン接種拒否」に寄り添うための7つの質問世界を「数字」で回してみよう(68)番外編(5/14 ページ)

[江端智一,EE Times Japan]

「陰謀」を案出ししてみる

 ここまでで、私は「政府は信用できない」から出発して、ちまたに流れているSNSの情報や、いわゆる「デマ」と呼ばれているものを、真剣に調べてみたのですが、結果としては「SNSの情報はさらに信用できない」という結論に至ってしまいました。

 特に、新型コロナワクチン接種に関する政府陰謀論については、まともな仮説すら見つからない状況です。

 それでも、陰謀論が延々と存在し続けているのは、

―― なんだか知らないけど、政府の陰謀はあるんだ! あるったら、あるの!!

というような感じです。

 まあ、前述したように、これまでの政府の姑息なウソの隠蔽事件から鑑みて、こういう気持ちになることは、分からなくもありません。

 そこで、仕方がないので、私が、政府陰謀論をいくつか案出ししてみました。ただ、今回は、その実現方法については、スキップすることにしました。そこまでの理屈を作るには、時間と気力が足りなかったからです。

 まず、代表的なところから「ワクチン接種者を、選択的に大量殺害する」というワクチン陰謀論から始めてみます。

 正直、上の表を作っていて、気分が悪くなってきましたが ―― まあ、映画の題材で、頻繁に出てきそうなストーリーではあります。

 「高齢者」「障がい者」「外国人」を排斥、という話は、優生保護法、高齢者による交通事故(加害者)、ヘイトスピーチ問題、(外国まで見れば、ナチスドイツのT4作戦、公民権運動、人種差別)に至るまで、話題に事欠きません。

 ここに、『政府不信 + コロナワクチン接種への同調圧力』が加われば、これらの陰謀論に流れる心理は理解できなくもありません。

 では、次は、逆側からのアプローチです。すなわち、「ワクチン非接種者を、そのまま放置して大量殺害する」という陰謀論です。

 ワクチン接種は、個人の自由意思ではありますが、非接種には、常に感染リスクが伴います。ここで逆転の発想を発動させます ―― ならば、そのまま、勝手に感染して死んでください、です。

 これは、実現できそうな話です。最近(2021年11月1日現在)、日本の感染者は劇的な減少傾向にありますので、これがしばらく続けば、コロナ医療体制(病床数、対応病院や医療従事者)も徐々に縮小されると思います。そこにやってくる、コロナ感染の第6波で、その医療体制を同規模で維持すれば、それで足ります。

 なにしろ、ワクチン接種を拒否している人は、日本ではマイノリティーになりつつありますので、第6波の波は、それらの人を選択的に襲い、かつ、その数は、それほど多くなりません。我が国は既に、1日当たりの新規感染者数2万人という大台を経験しています。これより少ない人数に抑えられるのであれば、国民は動じないと思います。



 とまあ、各種の陰謀論を案出してみたのですが、やはりここは、「陰謀論が、ちゃんと陰謀として機能するか」を検証してみたいです。そこで、今回は、最も効果が期待できそうな、「高齢者集団殺害」による効果について試算を試みることにしました。

 ところが、調べてみたら、日本のコロナ死亡者数というのは、各国と比べてみても、随分低い水準で抑えられています。

 世界と比較しても十分小さいですが(それでも、韓国、中国にボロ負けですが)、驚くべきはアメリカです。人口比あたりの米国のコロナの死者数は、日本の15.2倍、総死者数は70万人を突破しています。

 ちなみに第二次世界大戦での米国の死者は42万人、南北戦争36万人、ベトナム戦争6万人、朝鮮戦争4万人です。コロナによる死者数は、アメリカ合衆国建国史上、最大で ――

結果として、アメリカの平均寿命は1.5歳も低下しました*)

*)ニューズウィーク日本版「コロナでアメリカ人の平均寿命が大幅に短く...人種別の数字に大きな差が

 ちなみに、米国では、1.5年寿命を延ばずのに、14年間ほどかかっています。

 「ワクチンを世界中に配っている企業(ファイザー社、モデルナ社)を擁する国が、一体何やっているんだ?」と、本当に不思議です。

 日本なら、とっくに政権が倒れているはずです。米国なら暴動が発生して、大統領が辞任に追い込まれてもよさそうです(過去1回ある(ウォーターゲート事件))が、あの国では、逆に大統領の留任を求めた群集が暴動を起こしています(米議会襲撃事件) ―― 私にとって、あの国(アメリカ合衆国)は、今なお「不思議の国」です。

 ところが、日本のコロナ死亡者数は、アメリカと比較するまでもなく、国内の自殺者数と比較しても少ないです。

 まあ、これは、政府のコロナ対策(複数回の緊急事態宣言(東京都では4回)、政府の肝いりの医療体制の確立、3密回避、ワクチン接種)などがあった上での成果であり、この表の数値を持って「少ない」と言うのは、誤っています。

 シバタ先生-江端の試算では、「まったく何もしなかった場合、250万人以上のコロナ死者数」となり、その場合、日本の年間死亡者数は現在の3倍以上になります(参考)。

 ともあれ、「高齢者集団殺害」仮説を検証するに際して、日本のケースを導入しても、有意な結果が出そうにありませんでしたし、「政府のコロナ対策が一切なかった世界」でのシミュレーションをしても説得力がありません。

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