Analog Devices(ADI)の日本法人であるアナログ・デバイセズは2021年11月4日、同社のアライアンスパートナーであるサクラテックと共同開発した振動センサーソリューション「miRadar(マイレーダー) CbM」について説明会を開催した。
Analog Devices(ADI)の日本法人であるアナログ・デバイセズは2021年11月4日、同社のアライアンスパートナーであるサクラテックと共同開発した振動センサーソリューション「miRadar(マイレーダー) CbM」について説明会を開催した。
miRadar CbMは、ミリ波レーダー技術を応用してタービンやモーターなどの機械振動を非接触で測定するための製品。アナログ・デバイセズが開発したミリ波レーダートランシーバー「ADAR690x」を搭載した非接触振動センサーと、測定用ソフトウェアで構成される。サクラテックの製品として、マクニカ アルティマ カンパニーを通じて販売される。製品予定価格は約20万円(税別)。
CbM(Condition-based-Maintenance/状態基準保全)は機器メンテナンスの考え方の一つで、名前の通り、機器の状態に応じた保全作業を行うものだ。状態監視用の計測システムを導入して機器の劣化や故障をモニタリングし、必要な修理だけを行う。近年はディープラーニングによる予知診断も可能になっており、人手を大きく削減できる利点がある。
アナログ・デバイセズでデジタル・デマンドジェネレーション デジタルプラットフォームプログラムマネジャーを務める高松創氏は、「現在、機械状態監視の主流は振動モニタリングだ。振動センサーで、機器の状態を常時監視することで故障予知などを診断する」と説明する。
振動周波数は、異常の内容で変わる。数ヘルツ〜1kHzはアンバランスやミスアライメント、1kHz〜数十kHzはベアリング傷や歯車異常。そして、初期の劣化は、高周波振動から発生することが一般的に分かっていると高松氏は述べる。そのため、高周波振動は劣化を知る重要な指標となっている。
振動センサーとしては、現在、基本的には加速度センサーが利用されている。MEMS半導体センサーの高性能化が進んでいることに加え、価格が安いという利点がある加速度センサーだが、高周波振動センサーほど高価になるというデメリットもある。さらに、10kHzを超えると、より低い周波数で共振し、抑制が難しいという課題もある。「センサー機器のバッテリーやケーブルが共振に影響し、センサーの能力を発揮できなくなる」(高松氏)。さらに、表面が200℃を超える機器もあり、そうなるとセンサーの取り付け自体が困難になる。
これに対し、今回アナログ・デバイセズとサクラテックが提案する振動センサーは非接触なので機械に触れない、つまり機械共振を起こさずに振動を測定することが可能だ。機械から数メートルの範囲であれば測定することができ、最大40kHzと広帯域の振動を測定可能だ。機器に取り付ける必要がないので、機器が高温になっても問題ない。高松氏は「非接触の振動センサーとしてはレーザードップラーもあるが、光を使用する技術なのでコストが高い。後段のデータロガーまで入れると100万円以上となるケースもある」と説明する。
miRadar CbMの振動センサー(ミリ波レーダー)では、FMCW(周波数変調連続)方式を採用している。レーダーからの送信信号と、機械に当たって跳ね返ってきた受信信号との周波数の位相情報から振動を割り出す。
miRadar CbMの振動センサーは、アンテナ、アナログ・デバイセズのADAR690xおよび、XilinxのFGPAが搭載された基板を内蔵している。FPGAには、サクラテックが新規開発したSoC(System on Chip)/FPGA用のレーダー信号処理IP(Intellectual Property)が実装されていて、それにより高いデータスループットを実現している。
同振動センサーの変位量測定は、最小で30nm。説明会では、振動試験機を用いで振動を計測するデモを行い、38nmの振動振幅ピークまで測定できていることを示した。
なお、miRadar CbMの発売予定日は現時点では「未定」となっている。サクラテックの代表取締役兼CEOを務める酒井文則氏は、「早く発売したいが、昨今の半導体不足によりFGPAが全く手に入らず、発売のメドが立たない」と語った。
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