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電機8社の21年度上期決算、東芝の「脱・総合電機」に注目大山聡の業界スコープ(47)(4/4 ページ)

» 2021年11月17日 11時30分 公開
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ディスプレイデバイス部門の収益維持がカギとなるシャープ

 シャープの2021年度上期業績は、売上高1兆2182億円(前年同期比748億円増)、営業利益390億円(同94億円増)、当期利益425億円(同188億円増)であった。

シャープの事業部門別営業利益[クリックで拡大] 出所:シャープ決算資料よりGrossberg作成

 スマートライフ部門は、欧米向けのビルトイン調理器、国内向けエネルギー事業のEPC需要などが伸びた一方、コロナによるアジア向け白物需要が下振れて、増収微増益だった。8Kエコシステム部門は、シャープNECディスプレイソリューション社を連結対象に入れたことで売上高は大きく伸びたが、部材価格や物流コストの上昇で増益幅はやや限定的だった。ICT部門は、国内の法人向けPC需要の増加、通信事業におけるホームルータ需要の増加があったが、いずれも半導体などの部材コストの上昇で現役を余儀なくされた。ディスプレイデバイス部門は、車載向けやPC/タブレット向けが伸び、中型パネルの比率上昇でモデルミックスの改善があったため、増収増益を達成した。エレクトロニックデバイス部門は、COVID-19感染の再拡大による生産影響から減収減益になった。ただし現時点での生産は正常に戻っている。

 2021年度通期計画は、売上高2兆5500億円(前年度比1241億円増)、営業利益1010億円(同179億円増)、当期利益760億円(同228億円増)としており、期初予想から変更はない。しかしこれを達成できるかどうかは、ディスプレイデバイス部門の収益がどこまで維持できるかにかかっているだろう。親会社の鴻海から同部門にどれだけの需要が割り振られるか、についても着目したい。

EP&S分野で増益修正のソニー

 ソニーの2021年度上期業績は、売上高4兆6262億円(前年同期比5581億円増)、営業利益5985億円(同616億円増)、当期利益4275億円(同2383億円減、ただし前期は繰延税金資産に対する評価性引当金の一部、2149億円の取り崩しを含む)であった。

ソニーの事業部門別営業利益[クリックで拡大] 出所:ソニー決算資料よりGrossberg作成

 ゲーム&ネットワークサービス分野は、ゲームのソフト/ハード共に売上高は好調だったが、ハード単価の下落や自社製ソフトの減収などにより減益になった。音楽分野は、音楽制作、音楽出版ともに好調で、ストリーミングサービスも堅調だったため、増収増益だった。映画分野は、テレビ番組制作における作品納入数の増加、メディアネットワークの増収があったが、映画制作における広告宣伝費の増加で減益だった。エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション分野は、為替の影響に加えてスマホ販売の増加、テレビ、デジタルカメラ、オーディオなどのミックス改善で増収増益になった。イメージング&センシング・ソリューション分野は、モバイル向けイメージセンサーが減収となったが、デジタルカメラや産業機器向けの増収で若干の増益を達成している。金融分野は、ソニー生命が好調に推移しているが、特別勘定における運用益の減少などがあり、若干の減収減益である。

 2021年度通期の会社計画は、売上高9兆9000億円(前年度比9013億円増、前回計画から2000億円増額)、営業利益1兆400億円(同847億円増、同600億円増額)、当期利益7300億円(同2996億円減、同300億円増額)としている。エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューションの収益見通しを上方修正している点は、ポジティブに評価できよう。

全般的に増収増益基調だったものの……

 全体的に増収増益基調で推移している企業が目立った決算だった。実力ベースで伸ばすべき部門を伸ばしているソニー、三菱電機はポジティブに評価できる内容であった。増益ながらも前回から若干見通しを下げた日立、買収企業の再評価益など実力以外の上振れを含むパナソニック、ディスプレイ市場の動向に左右されやすいシャープは、年度末まで評価を保留したい内容といえる。これからDXやAIで多くの日系顧客をサポートすべきNECと富士通については、今のままでは物足りないので、もっとアグレッシブな戦略を掲げてもらいたい。その点、東芝は会社を3分割するという社内的にかなりアグレッシブな戦略に打って出た。この社運をかけた改革は時間をかけて見守るしかないだろう。

筆者プロフィール

大山 聡(おおやま さとる)グロスバーグ合同会社 代表

 慶應義塾大学大学院にて管理工学を専攻し、工学修士号を取得。1985年に東京エレクトロン入社。セールスエンジニアを歴任し、1992年にデータクエスト(現ガートナー)に入社、半導体産業分析部でシニア・インダストリ・アナリストを歴任。

 1996年にBZW証券(現バークレイズ証券)に入社、証券アナリストとして日立製作所、東芝、三菱電機、NEC、富士通、ニコン、アドバンテスト、東京エレクトロン、ソニー、パナソニック、シャープ、三洋電機などの調査・分析を担当。1997年にABNアムロ証券に入社、2001年にはリーマンブラザーズ証券に入社、やはり証券アナリストとして上述企業の調査・分析を継続。1999年、2000年には産業エレクトロニクス部門の日経アナリストランキング4位にランクされた。2004年に富士通に入社、電子デバイス部門・経営戦略室・主席部長として、半導体部門の分社化などに関与した。

 2010年にアイサプライ(現Omdia)に入社、半導体および二次電池の調査・分析を担当した。

 2017年に調査およびコンサルティングを主務とするグロスバーグ合同会社を設立、現在に至る。


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