メディア

10年で5世代の進化を遂げた高性能パッケージング技術「CoWoS」(後編)福田昭のデバイス通信(335) TSMCが開発してきた最先端パッケージング技術(8)

前編に続き、「CoWoS(Chip on Wafer on Substrate、コワース)」の進化について解説する。

» 2021年11月25日 11時30分 公開
[福田昭EE Times Japan]

 (ご注意)今回は前編の続きです。まず前編を読まれることを推奨します。



搭載するロジックとメモリの両方が常に大規模化

 前編では、高性能パッケージング技術「CoWoS(Chip on Wafer on Substrate、コワース)」が最初の開発から約10年の間に派生品を生み出したこと、派生品を含めて3種類の「CoWoS」技術が存在することを説明した。さらに、「CoWoS」技術が2011年に初めて開発されてから、どのように発展してきたかを振り返った。

 オリジナルの「CoWoS」技術は中間基板(インターポーザ)にシリコン(Si)基板を使う。現在ではこのタイプを「CoWoS_S(Silicon Interposer)」とTSMCは呼称している。前編で説明したように、2011年の第1世代から2019年の第4世代までの間に、「CoWoS_S」(従来の「CoWoS」)技術はインターポーザ面積とトランジスタ数、メモリ容量の拡大を継続してきた。

「CoWoS_S」(従来の「CoWoS」)の進化。2011年の第1世代から、2021年の第5世代まで改良を重ねた。2023年には次世代の「CoWoS_S」を開発する[クリックで拡大] 出所:TSMC(Hot Chips 33の講演「TSMC packaging technologies for chiplets and 3D」のスライドから)

 インターポーザはもともとから巨大だったのが、さらに巨大化した。第1世代がレチクル1枚に相当する面積(775mm2)であり、第2世代と第3世代ではレチクル1.5枚に相当する面積(1150mm2と1170mm2)に広がった。第4世代だとさらに大きくなり、レチクル2枚に相当する面積(1700mm2)に達した。

 インターポーザに搭載するシリコンダイは、当初は複数のロジックダイだった。第3世代からはロジックとメモリの混載に対応した。ロジック(SoC)ダイと高速DRAMモジュール「HBM(High Bandwidth Memory)」の積層ダイ群を搭載するようになった。具体的には、1枚のSoCダイと4個のHBM(4Gバイト×4個で合計16Gバイト)を混載した。第4世代ではSoCダイの面積(集積規模)が拡大するとともに、混載するHBMが6個に増えた。1個のHBMに記憶可能な容量が2倍に増えたことにより、HBMの総容量は第3世代の3倍(48Gバイト)と大きく増加した。

「CoWoS_S」の改良がHPCシステムの進化を後押し

 ことし(2021年)に開発した第5世代の「CoWoS_S」(従来の「CoWoS」)は、Siインターポーザをレチクル3枚に相当する2500mm2とさらに拡大するとともに、第3世代の2倍である8個のHBMを搭載する。ロジックのシリコンダイは再びチップレットとなり、2個のミニダイを総計1200mm2の領域に載せる。搭載可能なHBMの仕様は「HBM2E」(HBM第2世代の強化版)である。

 Siインターポーザの再配線層(RDL)は、銅(Cu)配線を従来よりも厚くすることでシート抵抗を半分以下に低減した。5層のCu配線によってシリコンダイ間を接続する。またシリコン貫通ビア(TSV)による高周波損失を低減するため、TSVを再設計した。2GHz〜14GHzの高周波領域における挿入損失(S21)は、従来の0.1dB強から再設計後は0.05dB強に減少した。さらに、深い溝による高容量のキャパシタ「eDTC(embedded Deep Trench Capacitor)」をSiインターポーザに作り込むことにより、電源系を安定化した。eDTCの容量密度は300nF/mm2である。電源分配ネットワーク(PDN)のインピーダンスは、100MHz〜2GHzの周波数領域でeDTCによって従来の35%以下に減少した。

第5世代の「CoWoS_S」(従来の「CoWoS」)を支える要素技術[クリックで拡大] 出所:TSMC(Hot Chips 33の講演「TSMC packaging technologies for chiplets and 3D」のスライドから)

 次世代(第6世代)の「CoWoS_S」は、2023年に開発する予定だ。Siインターポーザの大きさはレチクル4枚分とさらに巨大になる。単純計算では約3400mm2(約58.6mm角)に達する。ロジック部分はチップレットによる2枚以上のミニダイを搭載し、メモリ部分は12個のHBMを載せる。対応するHBMの仕様は、「HBM3」となるもようだ。

「CoWoS_S」(従来の「CoWoS」)の開発ロードマップ[クリックで拡大] 出所:TSMC(2020年12月に開催された国際学会IEDMのショートコース「Advanced 3D System Integration Technologies」のスライドから)

次回に続く

⇒「福田昭のデバイス通信」連載バックナンバー一覧

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSフィード

公式SNS

All material on this site Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
This site contains articles under license from AspenCore LLC.