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英国、NVIDIAによるArm買収の調査を拡大へさらなる調査を開始(2/2 ページ)

» 2021年11月30日 11時30分 公開
[Nitin DahadEE Times]
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主な懸念事項

 この他にも業界のコメントから、以下のような重要なテーマが明らかになっている。

  • Armの技術は、英国の国家安全保障にとって非常に重要とされる産業部門で採用されているため、技術主権に関する懸念も生じている。例えば、合併後の新企業が最終的に、米国の技術輸出規制の対象になるのではないかという懸念もある
  • 合併後の新会社が、重要なコンピューティングインフラ向け部品の主要なサプライヤーとなることで、データセンターやエッジ/クラウド関連のアプリケーションで採用されている技術に関連した競争上のリスクが生み出されるのではないかという懸念もある

 NVIDIAは、英国規制当局の承認を得るための取り組みにおいて、行動的問題解消措置を提案し、その一環としてArmのオープンライセンスプログラムを保持するための5年計画を提示した。また、既存のライセンシーに対してArm技術へのアクセスを提供するとし、その中にはNVIDIAが取得する全てのArm技術へのアクセスも含まれるという。

 この他にもさまざまな措置として、Armのアーキテクチャ/実装など全てのライセンシーに向けて、Arm技術への早期アクセスを提供することや、実装ライセンシーに対してArm IPを制限なしに提供すること、既存の全てのArm機密保持契約を守ること、Armライセンシーに対して、最新のNDA(秘密保持契約書)への締結機会を提供し、顧客の機密情報を保護すること、提示した全てのステップを監視する監視受託者管理者を任命すること、などが提案されている。

 CMAは、NVIDIAが提案した措置について、CMAの定める基準に対し、競争上の懸念への対応が不十分であると結論付けた。122ページに及ぶCMAのレポートについては、こちらを参照いただきたい。

代替策はあるのか

 これに対しNVIDIAは、Financial Timesのインタビューの中で、「当社としては、合併買収による競争上の影響に関して、CMAの最初の見解に対処していく予定だ。引き続き英国政府との協業により、懸念を解消していきたい」と述べている。

 Cambrian AI Researchの主席アナリストを務めるKarl Freund氏は、EnterpriseAIのインタビューに応じ、「技術主権をめぐる問題に関しては、欧州の政府機関の中でも特に英国が、さまざまな懸念を抱いている。しかし英国は、ソフトバンクによるArmの買収は承認したのに、なぜNVIDIAがArmにとって最善の成果になり得るかを判断することに苦闘しているのだろうか。NVIDIAは、ArmがRISC-V市場の一歩先を行く位置付けを維持するために必要な資本を持っているからではないか」と述べる。

 Freund氏は、「NVIDIAのCEOであるJensen Huang氏は、現在の技術業界の中で最も優れたリーダーの1人である。業界や世界全体に及ぼす影響の大きさという点では、Steve Job氏に匹敵する人物といえるだろう。Huang氏は非常に聡明なため、ArmのパートナーたちがArmライセンスから得ている競争力やイノベーションをあらゆる手段で低減させることによってArmを台無しにするなど、できるはずがない。法外な金額を支払って手に入れる資産を、なぜ危険にさらす必要があるだろうか」と述べている。

 Huang氏とArmのCEOであるSimon Segars氏は、規制当局の厳しい調査対象となることを明確に予測していたのだろう。規制当局や自社の顧客/パートナー企業からの懸念が殺到していることもあり、買収に対する批判には長期的に対応する覚悟を決めているようだ。

 このような長期的な戦略にもかかわらず、NVIDIAとArmの買収が競争上または国家安全保障上の理由で阻止されたらどうなるのだろうか。“プランB(代替案)”はあるだろうか。

 Segars氏は以前、IPO(新規公開株式)の可能性を否定し、ことし(2021年)初めのブログで次のように書いている。「IPOを検討したが、短期的な成長と収益性を実現しなければならないというプレッシャーが、“投資、拡張、迅速な行動、革新”を行う当社の能力を押しつぶしてしまうと判断した。NVIDIAとの統合により、今後の機会を最大限に活用するために必要な規模やリソースを得られると考えている」

 英国の調査は完了するまでに数カ月を要するとされているため、現時点で結果を推測するのはまだ早いだろう。だが、今回の買収が規制上のハードルをクリアできず、ArmがIPOを考えていないのであれば、他のシナリオはほとんどないに等しい。

【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

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