図4は、Coreシリーズのコンペチタ―となっているAMDのプロセッサ「Ryzen 9 5950X」の分解写真である。Ryzen 9 5950Xは、およそ1年前の2020年11月に発売されたもの。パッケージ内にシリコンを並べて機能を実現する、チップレットという手法を用いている。
図5に、Ryzen 9 5950Xと、IntelのCore i9-12900Kの比較を示す。Ryzenのコアは、前述した通りチップレットの手法を用いている。CPUコアには、おのおの8コアが搭載されている。2個置けば16コア、4個置けば32コアとスケーラブルな展開が容易にできる構成だ。サーバ用もPC用も同じシリコンが使われ、使用する個数で製品ラインアップを作っている。
CPUは演算に特化しているので外部とのインタフェース用のIOチップというものが別途用意され、CPU間やCPUとのインタフェースはファブリックと呼ばれるバスで接続されている。シリコン種は少なく、組み合わせによってさまざまな仕様を作り上げることができるという利点がある。
一方Intelは、プロセッサ用のシリコンを選別によって仕様分けし、バリエーションを増やしている。Intelの場合は、別パッケージにサウスブリッジと呼ばれる外部とのインタフェースチップを用意する。メインのプロセッサとサウスブリッジを組み合わせる、チップセットと呼ばれる方式でシステムを完成させている。
サウスブリッジには、USBやPCIe(PCI Express)などの多くの端子とともに、オーディオ機能なども搭載されている。チップレット、チップセットという異なる方式でAMDとIntelは提案を行っているが、いずれも一長一短がある。チップレットは1パッケージで済むが、拡張性には限界がある。一方チップセットでは、サウスブリッジを変えれば拡張性は上がっていく。
図6は、Ryzen 9 5950XのCPUコアと、Core i9のCPUコアをそれぞれ4コア分(L3を3MB分とした)切り出して比較した結果である(画質は落としてある)。製造されるプロセスも異なれば、アーキテクチャも異なるので、単純に比較することはできない。
10nmに比べて7nmは、単純計算では半分の面積になる(10×10:7×7)。だが、実際のシリコン同士の比較では、面積差はさほど大きいわけではない。図6は面積比ではないので、詳細はぜひお問い合わせいただきたい。
2021年は半導体にとって、半導体不足や巨額の投資戦略など、話題に事欠かない、記録的な1年であった。一方で世界初のマイクロプロセッサであるIntelの「i4004」が誕生して50年目という節目でもあった。
この50年の間に、プロセスもアーキテクチャも大きく進化し続けた。Apple M1 Maxとi4004を比較すると(詳細はテカナリエレポート550号)、1シリコンに搭載されるトランジスタ数は約2500万倍、集積密度は86万倍にもなっている。
4ビットCPUのi4004は10μmプロセスで製造された。1971年のことである。それから14年後の1985年、Intelは「Intel 80386」を1桁小さい1.5μmプロセスで製造し、32ビット化を行った。さらに14年後となる1999年には、商用では失敗したもののサーバ用の「Itanium」(開発コードネームはMerced)で64ビット化し、さらに1桁小さい180nmプロセスを適用している。13年後の2012年には、さらに1桁小さい14nmプロセスで「Core M」の製造を開始した。過去50年の間、製造プロセスノードが1桁下げるサイクルは、約14年だったわけだ。およそ“えとひと回り”と言い換えてもいいかもしれない。
現在も、Intelも含めてさまざまなメーカーや研究機関がさらなる微細化に取り組んでいて、それらの開発では実現の目標年が2030年前後となっている。14nmの登場からカウントすると、1.Xnmの実現が2030年近くになるというのは、“14年サイクル”と一致している。いずれにしても、2020年代のうちに、1nmプロセスの姿は、可否も含めて見えてくるだろう。このサイクルがこの先も続くのか、ぜひこの目で確かめたいものである。
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