「7.1 整流回路と負荷」は、インピーダンス整合回路(インピーダンスマッチング回路)の後段にくる負荷(整流回路)の入力インピーダンス設計を主題とする。本コラムの第357回(本シリーズの第11回)で説明したように、インピーダンス整合回路によって整流回路の入力電圧を最大化すると、負荷である整流回路の入力電圧Vrectは「Pavの2倍を負荷コンダクタンスGLで割った値の平方根になる。なお負荷コンダクタンスGLの逆数は、負荷抵抗RLの2乗と負荷リアクタンスXLの2乗を合計した値を負荷抵抗RLで割った値でもある」(本文末尾から引用)。
アンテナから整流回路(負荷)までの等価回路(左)と、整流回路の入力電圧(右)[クリックで拡大] 出所:imecおよびEindhoven University of Technology(IEDMショートコースの講演「Practical Implementation of Wireless Power Transfer」のスライドから)ここで整流回路の回路定数の選択には、2通りの考え方がある。1つは負荷抵抗RLを最大化する考え方。もう1つは、負荷リアクタンスXLを最大化するとともに負荷抵抗RLを最小化する考え方(XL >>RL)である。整流回路で一般的なショットキーダイオードは寄生抵抗が低くて寄生容量が高い。従って後者の考え方を選ぶことになる。
具体的な回路製品の選択に入ろう。ショットキーダイオードにはBroadcomの「HSMS-2852」(2個のショットキーダイオードを内蔵)を、DC-DCコンバーターにはTexas Instruments(TI)の「BQ25570」(参考記事:「整流回路の出力を所望の電源電圧に変換するコンバーターの原理」)を採用した。負荷としてのDC-DCコンバーターの値は約10kΩになる。電力伝送に使用する周波数は868MHz帯あるいは915MHz帯である。
なお「HSMS-2852」は、電子部品商社のウェブサイトでは生産中止品や取り扱い休止品などとなっていることが少なくない。注意されたい。
採用したショットキーダイオードとDC-DCコンバーターの製品名と、使用する周波数帯域の電力規制値。なおAvago(現Broadcom)の「HSMS-2852」は生産中止品となっている[クリックで拡大] 出所:imecおよびEindhoven University of Technology(IEDMショートコースの講演「Practical Implementation of Wireless Power Transfer」のスライドから)⇒「福田昭のデバイス通信」連載バックナンバー一覧
ワイヤレス電力伝送の過去から未来までを展望
大電力対応ワイヤレス充電用シート型コイルを開発
数ミリ〜数十センチ間で、数百Mbpsの高速無線通信
GaNベースの無線充電器、出力は最大300WでEVにも
シリコンフォトニクスとは何か
シリコンフォトニクスの技術開発ロードマップCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
記事ランキング