米国の大規模なセルラーインフラとファイバーのプロバイダーは、5G(第5世代移動通信)スモールセルの展開が一時的に減速すると予想している。これは、モバイルネットワークオペレーター(MNO)の顧客が当面は大規模なCバンド5Gの展開に集中するとみられるためだ。
米国の大規模なセルラーインフラとファイバーのプロバイダーは、5G(第5世代移動通信)スモールセルの展開が一時的に減速すると予想している。これは、モバイルネットワークオペレーター(MNO)の顧客が当面は大規模なCバンド5Gの展開に集中するとみられるためだ。
ファイバーやスモールセル、分散アンテナシステムのプロバイダーであるExteNetの戦略および製品担当バイスプレジデントを務めるJay Floyd氏は、米国EE Timesに対し「スモールセルについては一時的に動きが休止すると見ている」と述べている。
VerizonとAT&Tは、Cバンド(3.7G〜4.2GHz)の5Gミッドバンドサービスの導入当初、この新しいセルラー技術が航空会社の高度計に干渉することに対して米国連邦航空局(FAA:Federal Aviation Authority)が懸念を示したため、サービス開始を延期せざるを得なかった。この問題の大部分が解決された今、Verizonは2022年末までにCバンド5Gサービスで米国内の1億7500万人をカバーする計画で、AT&Tは1億人をカバーする予定だという。
しかし、このマクロインフラの急展開によって、5Gスモールセルの展開が遅れることになった。これらの小型トランシーバーは4Gで初めて登場し、セルラーネットワークの特定エリアにおけるカバレッジを深め、利用可能な容量を拡大し、このゾーンのユーザーのデータダウンロード速度を向上させるために使用されてきた。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックの影響は既に、5Gスモールセル市場の成長にマイナスの影響を及ぼしている。現在、米国の一部のMNOは、5GセルタワーへのCバンド無線の展開に焦点を移しているため、スモールセルの普及は一時的に減速している。
Floyd氏は、「2022年と2023年に展開が完全に停止するわけではない」としている。実際に、「スモールセルの導入ペースは2023年半ばに回復し、そこから動きが活発化すると予測される」と述べている。
これは、米国の市場調査会社ABI Researchの2022年8月のレポートとも一致している。同社のアナリストは、5Gマクロ無線アクセスネットワーク(RAN)だけでは急速なモバイルデータトラフィックの増加に対応できないため、2025年にスモールセルの展開が加速すると予測している。ABIは、「利用可能な新しいマクロセルサイトは数が限られているため、この問題を解決する最も現実的なアプローチは、5Gスモールセルの高密度展開である」と述べている。同社は「2027年までに、世界中で1300万台の屋外5Gスモールセルが設置される」と予測している。
Floyd氏は「主にMNOが加入者に提供するサービスを優先するため、屋外のスモールセルの展開は常に屋内分野を上回る」と述べる。ただ、同氏は、屋内分野で興味深い展開があると見ている。「現在、統合型リゾート運営会社MGM Resortsの協力を得て、国内最大規模の屋内ネットワーク構築プロジェクトに取り組んでいる。このような施設や顧客のロケーションの場合、サービスが届く人数が多いという理由で優先される」(同氏)
スモールセルは、都市部のネットワーク密度を高めるという原点から発展しており、5Gスモールセルが提供できる市場も広がってきている。
Floyd氏は、「MNOは今後数年間で、スモールセルが提供するエリアと市場を拡大する。VerizonとT-Mobileの両社は、固定ワイヤレスアクセス市場に参入し、固定ワイヤレスインターネットアクセスを家庭に提供していく意向を固めている。そのため、ネットワークの高密度化のニーズが高まり、これまでの典型的な都市部の高密度化を超え、住宅地での普及に拍車が掛かるだろう」と述べている。
ケーブル会社もセルラー市場に参入し始めており、今やRAN市場の競合はMNOだけではなくなった。ケーブル会社は、自社が事業を行っている州において、独自の5Gスモールセルを構築することが予想される。
Floyd氏と、ReconのリードアナリストのRoger Entner氏は、ケーブル会社がより多くの5Gスモールセルを構築すると予想している。Entner氏は、「ケーブル会社がかなり力をつけてくるだろう。CharterもComcastもCBRS(Citizens Broadband Radio Service)の周波数を持っており、これを用いてカバレッジのオーバーレイを行う計画だ」としている。
Floyd氏は、ケーブル会社は、自社のネットワークを構築したいはずだ。そうすればマクロサイトだけでなくスモールセルも含まれることになる」と述べている。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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