NXP Semiconductors(以下、NXP)は2021年6月28日(オランダ時間)、初めてGaNを採用した小型高効率の5G(第五世代移動通信)Massive MIMO向けRFパワーアンプモジュールを発表した。GaN採用によって電力付加効率を前世代品から8%向上したほか、400MHzの帯域幅を1製品で対応できるワイドバンド性能も実現。同時に、さらなる統合も進めたことで小型化や、デザインサイクルタイムの短縮を可能としている。
NXP Semiconductors(以下、NXP)は2021年6月28日(オランダ時間)、初めてGaNを採用した小型高効率の5G(第5世代移動通信)Massive MIMO向けRFパワーアンプ(PA)モジュールを発表した。GaN採用によって電力付加効率を前世代品から8%向上したほか、400MHzの帯域幅を1製品で対応できるワイドバンド性能も実現。同時に、さらなる統合も進めたことで小型化や、デザインサイクルタイムの短縮を可能としている。
NXPの日本法人NXPジャパンは同月30日にメディア向け説明会を実施。同社は5Gインフラにおいて普及が進むMassive MIMO無線機設置の課題として「通信距離が短いので、より多くの無線機設置が必要」「町中に設置するため、無線機の小型化が必要」「放熱対策、低消費電力が必要」の3点を挙げたうえで、今回発表したPAモジュールが、「全ての課題に対応できるソリューションだ」とした。
同社は既にRFパワーマルチチップモジュールとしてLDMOSベースの製品を開発、展開してきた。モジュール化により、既存のRF設計に比べ基板面積を80%、部品点数を75%削減するほか、デザインサイクルタイムも3分の1から半分にまで短縮可能にしたという(※1.8G〜2.2GHz帯のPAの比較)。今回は、ここに初めてGaNを導入したことで、最大周波数アップやエネルギー効率、ワイドバンド性能の向上も実現した。
具体的には、従来のLDMOSモジュールと比べ電力付加効率を8%改善(2.6GHz帯で比較)したほか、400MHzという広い帯域幅への対応を可能にした。また、カバー周波数帯についても、「ワールドワイドでメジャーな2.6GHz帯や3.5GHz帯、3.98GHz帯あたりは十分に対応できる。LDMOSは低い周波数ではパワーが出しやすく、値段も安いが、周波数が上がるとパワーを出しにくくなる。5Gで使われる高い周波数帯ではGaNの方がパワーが出るし、効率面でもメリットがある」と説明していた。
上図が今回発表した5G Massive MIMO向けRFパワーアンプモジュールの概要だ。多段送信チェーン、50Ω入出力マッチングネットワーク、ドハティスプリッター/コンバイナーのほか、従来製品では外付けだったBIASコントローラーも新たに統合した。なお、今回の製品ではファイナルステージにGaNを採用したが、前段はLDMOSのままとなっている。同社担当者は、「現在マーケットから要求ある性能レベルを見ると、この構成が、パワーレベル、効率的に一番マッチする」と説明していた。
同社は2020年9月、米国アリゾナ州チャンドラーに新設した150mm(6インチ)ウエハー対応のGaN工場の稼働開始を発表したが、今回、「同工場はRFパワーに特化したファブで、性能を引き出すうえで有利になっている。これにより顧客に高性能のものを提供でき、また納期面でも迷惑かけることなく納めることができる」と強調した。
今回発表したモジュールは、2021年第3四半期にサンプル出荷を開始し、2021年後半に量産を開始する予定だ。
同社はこの日、マルチチップPAモジュールとプリドライバ、Rxモジュール(LNA)といったTx/Rxで必要になる全てのコンポーネントを実装し簡単に評価ができる評価ボード「RapidRF」も発表した。こちらは既にLDMOSベースかつ外付けBIASコントローラーの製品を提供中で、2021年第3四半期にはLDMOSベースでBIASコントローラーを統合した製品、そして同年第4四半期に今回発表したGaN採用の製品がリリースされる予定だ。
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