ガリウムは通常、一次鉱床からは抽出されないが、アルミニウムや亜鉛の採掘の副産物として発見されることが多い。以下に、ガリウムの主な産地を示す。
なお、ガリウムは、半導体の製造工程で生成された半導体ウエハーのリサイクルによって採取することもできる。ただし、半導体のダイがデバイスに組み込まれると、各アイテムに含まれるガリウムの量は非常に微量になるため、リサイクルは非常に困難になる。
ゲルマニウムは主に亜鉛鉱石加工の副産物として採取される。以下に、ゲルマニウムの主な産地を示す。
中国はガリウムとゲルマニウムの主要な生産国であるため、今回の輸出規制はこれらの材料の世界的なサプライチェーンを混乱させる可能性がある。これは、材料自体の供給不足と価格上昇につながるだけでなく、ガリウムやゲルマニウムを使うデバイス/部品の入手性と価格にも影響を及ぼす可能性がある。特に、パワーエレクトロニクス、再生可能エネルギーシステム、電気自動車、照明などの分野は、需要を満たす上で困難に直面する可能性がある。
短期的には、中国による今回の輸出制限は、ほぼ即座にこれらの材料の価格に影響を与えると考えられている。特に欧米の企業や組織は、ガリウムやゲルマニウムの調達が難しくなり、価格の上昇やリードタイムの長期化を招くことになる。
エレクトロニクス分野への影響を長期的に予測するのはより困難である。ゲルマニウムの在庫は米国など数カ国で十分だが、ガリウムとなると話は別だ。
欧米の企業や政府は、これらの材料の供給元を多様化するための措置を講じると予想される。新たな供給ルートを求めるだけでなく、ガリウムやゲルマニウムの生産量そのものを増やす努力も行われるだろう。
今回の規制は、研究者や業界関係者を同様の特性を持つ代替材料の探求に駆り立てるかもしれない。これにより、新材料の発見や開発、あるいは既存材料の最適化につながる可能性がある。
そうした材料の例として、WBG(ワイドバンドギャップ)半導体の一つで、パワーエレクトロニクスや高周波デバイスへの応用にも期待されている酸化ガリウム(Ga2O3)が挙げられる。Ga2O3は活発に研究されていて、GaNや他のワイドバンドギャップ材料に代わる有望な材料として期待されている。
もう一つのWBG半導体が酸化亜鉛(ZnO)だ。こちらはオプトエレクトロニクスや透明エレクトロニクス、e-モビリティなど向けに研究開発が行われている。
代替材料の適合性と採用は、性能や拡張性、信頼性、費用対効果などさまざまな要因に左右される。これらの材料を最適化し、さまざまな電子用途における可能性を探るべく、研究開発が進んでいる。
※本記事は、米国EE Timesの姉妹媒体であるPower Electronics Newsの記事を翻訳、編集したものです。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.