スマートフォンでは従来、手前側の撮影用カメラはディスプレイの上部外側に配置することが多かった。このレイアウトだと本体の大きさよりもディスプレイがやや小さくなってしまう(あるいはディスプレイよりも本体がやや大きくなってしまう)。そこでディスプレイの最上部に小さな孔(カメラホール)を開けてその下にカメラを配置する機種が商品化された。ただし孔が開いている部分は黒くなっており、画像が映らない。
そこでディスプレイパネルに孔を開けずにカメラを配置する「アンダーパネルカメラ(UPC:Under Panel Camera)」技術が考案され、中国と韓国のスマートフォンメーカーが製品化した。カメラが配置されている部分は画素の寸法を変更することで、光の透過率を高めている。
このほか、スマートフォン用ディスプレイとして今後の普及が予想されている、折り曲げ可能なOLEDパネルでは、新たな技術がSamsung Displayによって提案された。偏光板を省いた「POL-LESS(Polarizer-less)構造」のフレキシブルOLEDパネルである。
従来のフレキシブルOLEDパネルはフィルム基板の上にTFT駆動回路層、三原色の発光層、薄膜封止材、タッチセンサー、円偏光板、カバーガラスを積層する。円偏光板の厚みは50μm〜100μmであり、パネル内部の反射光を抑えている。ただし透過光は弱まる。
POL-LESS構造では円偏光板の位置に、外光反射防止用のカラーフィルタを発光色別に配置するとともに、発光色の境界部に反射光を吸収するBM(Black Matrix)層を組み込んだ。また発光層の隔壁(PDL:Pixel Define Layer)を黒色化して反射光を抑えている。POL-LESS構造によってパネルの消費電力を約25%低減できる。
なお折り曲げ可能なディスプレイの保護層(最上層)は、従来は透明なポリイミドフィルムなどの屈曲しやすいプラスチックフィルムが考えられていた。ところが厚みが30μm〜100μmの屈曲可能な極薄ガラスが開発されたことで、折り曲げ可能なスマートフォンでもディスプレイのカバー層には極薄ガラスを採用するようになりつつある。
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