今回は、第2章第6節第4項「ロボット」の概要を解説する。
電子情報技術産業協会(JEITA)が3年ぶりに実装技術ロードマップを更新し、「2022年度版 実装技術ロードマップ」(書籍)を2022年7月に発行した。本コラムではロードマップの策定を担当したJEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会の協力を得て、ロードマップの概要を本コラムの第377回からシリーズで紹介している。
前回までは、第2章第6節第3項「次世代ディスプレイデバイス」の概要を説明してきた。今回は、第2章第6節第4項「ロボット」の概要を簡単に解説する。
第2章第6節第4項「ロボット」は、以下の項目によって構成される。「2.6.4.1 はじめに」「2.6.4.2 産業用ロボットの動向」「2.6.4.3 サービスロボットの動向」「2.6.4.4 ロボット分野における新たな研究開発動向」、である。
ロボットは大別すると、工場の製造ラインで使われる「産業用ロボット」と、製造以外の用途で使われる「業務・サービスロボット」に分けられる。産業用ロボットの用途には、溶接・塗装、アクチュエータ、組立・搬送、クリーン搬送などがある。業務・サービスロボットの応用分野には、医療・介護、家庭、建設/物流・搬送/レスキュー/インフラ/農業、オフィス・店舗などがあり、産業用に比べると幅広い。
市場規模は業務・サービスロボットが大きく、産業用は業務・サービスの半分程度にとどまっている。ただしいずれのロボットも、市場規模は拡大傾向にある。
市場調査会社の富士経済が2021年6月1日に公表した報道機関向けリリースによると、2020年の製造業向けロボット市場(世界市場)は9970億円であり、前年に比べると3.2%減のマイナス成長となった。マイナス成長の原因は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な大流行と、米中貿易摩擦による設備投資の抑制である。ただし2020年後半には中国と半導体製造を中心に設備投資が活発化したことで、当初の予想よりも小さなマイナスにとどまった。2021年以降はコロナ禍が収束しつつあることから、市場は拡大に転じる。
同じリリースによると、2025年に製造業向けロボットの世界市場は1兆6018億円に達すると予測した。2020年に比べると60.7%増になる。用途別で最も成長率が高いのは「組立・搬送系」で、84.6%増と予測する。
富士経済は2021年6月15日付けの報道機関向けリリースで、業務・サービスロボットの世界市場を調査した結果を公表している。2020年の市場規模は2兆3501億円と推定した。前年比17.9%増である。COVID-19の大流行にもかかわらず、人手不足や非接触需要、自動化需要によって市場が拡大した。
同じリリースによると、2025年に業務・サービスロボットの世界市場は4兆1578億円に達すると予測した。2020年と比べた伸び率は76.9%であり、製造業向け(産業用)よりも高い。用途別ではすべての分野で高い伸びを予測する。
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