なお、今回のAIカメラは、SSSのエッジAIソリューション向けの開発/運用プラットフォーム「AITRIOS」が必須ではなく、MobileNetSSDをプリインストールした状態であるほか、「より多くのモデルがRaspberry Pi OSに事前インストールされていて、ユーザーがカメラに転送できるようになっている」という。
ただ、SSSは今回のAIカメラの発表に際し、「Raspberry Piと、AITRIOSによる一層の連携を推進していく。われわれのイメージセンサーを搭載したAIカメラの魅力を最大限活用し、両社による協業を拡充させていく」とコメントしているように、AITRIOSベースのサービス展開も予定している。
具体的には、2つのフェーズがある。1つ目がローカルPC環境での、IMX500で動作するAIのトレーニングサービスを含めたモデル提供だ。これらは商用可能で、2024年10〜11月にも提供を開始する予定だという。SSSは2024年7月、AITRIOSをクラウドサービスを経由せずにローカル環境で直接評価/検証するためのソフトウェアキット「Local Edition」をリリースしているが、「この中のAIトレーニング環境などの部分を切り出してRaspberry Pi向けに少し修正をし、Raspberry Piで動くような形で提供する」という。
そして、第2フェーズとして複数台のデバイスのマネジメントが必要になる場合に向けた、AITRIOSのクラウドサービス提供を予定。こちらは具体的な予定は確定していないものの、「2025年度中にはリリースしたい」としている。
SSSの担当者は、「企業はDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、巨大なサーバで挑戦し実現したものの、『これでは全くコストが見合わない。エッジで何とかしなければいけない』という認識になってきたのが、世界的な現状だ」と説明。2021年にAITRIOSを発表してからこれまで国内外の小売業界や物流業界などで複数の導入/PoC(Proof of Concept)事例があるという。
一方で、AITRIOSのユーザーからは「まず試すには少し値段が高い」「ローカル環境で試したい」「使い慣れた開発しやすい環境(Raspberry Piなど)でエッジアプリケーションを作りたい」といったフィードバックもあったという。今回のAIカメラは、こうした要望に応えるものとなっている。
価格については、これまでSSSおよび同社パートナーが提供してきた商用レベルのAITRIOS準拠カメラと比較して、今回の製品は「ボードむき出しの状態で提供される開発者向けのもので、よりリーチしやすい価格(税別70米ドル)になっている」(SSS担当者)。SSSは、比較的安価かつ充実した開発環境および、Raspberry Piの巨大な開発者コミュニティーの存在などから、今回の製品がより多くの開発者に利用され、商用フェーズに入っていく中で、AITRIOSの利用が拡大していくことを期待しているという。
SSSの担当者は、「より多くの人々がAIカメラを使っていく中で、できることも増え、商用フェーズに移行していくと思うが、デバイス自体が増えていくと、クラウドでマネジメントが必要となり、AITRIOSを使う機会も増えてくるだろう。商用のAIモデルのサービスは、一度作ったAIがそれで完成ではなく、いろいろな環境に導入する中で再学習などの必要が出てくる。AITRIOSであれば簡単に商用の横展開が可能になる」などと強調していた。
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