東京大学とJSRの研究グループは、半導体露光装置を用い可視光の平面レンズを低コストで大量生産できる手法を開発した。
東京大学大学院理学系研究科の小西邦昭准教授や山田涼平特任研究員(当時)らと、JSRの岸田寛之氏らによる研究グループは2025年1月、可視光の平面レンズを半導体露光プロセスのみで大量生産できる手法を開発したと発表した。
光学レンズはこれまで、研磨技術を用いて作製するのが一般的であった。これに対し近年は、メタレンズなど新しい平面レンズを作製する技術が注目されている。それは、半導体露光装置などの微細加工技術を用い、集光特性に優れたフレネルゾーンプレート(FZP)型平面レンズを低コストで実現する方法である。ただ、サブミクロンの人工構造を作製するには、成膜装置や半導体露光装置、ドライエッチング装置など、複数の装置が必要で製造工程も複雑になっていた。
研究グループは今回、特定波長を吸収して光の透過を遮断できるJSR製の「カラーレジスト」を用いた。ガラス基板上にカラーレジストをスピンコートし、半導体露光装置で紫外線を照射し現像するだけで、幅の異なるリングが同心円状に並んだFZPと呼ばれる平面レンズが完成する。
実験では、8インチのガラス基板上に多数のFZP平面レンズを作製した。リングの幅と間隔は外側ほど小さく、最も外側では約1μmとなる。作製したレンズを用いて波長550nmの光を集光したところ、約1.1μmのビーム径に集光できることが分かった。この集光特性は数値計算シミュレーションの結果ともほぼ一致しているという。
開発したレンズを、イメージング用レンズとして用い、その特性を評価したところ、分解能は約1.1μmとなった。波長450nmと650nmの光に対しても同じような高い集光性を示すレンズを作製できたという。
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