東北大学は、白金を混合した金属磁性体ナノ薄膜が、従来よりも約5倍大きい光磁気トルクを発生したと発表した。光の強度を約5分の1に弱めても同じ効果が得られることから、光磁気デバイスの省エネ化が可能となる。
東北大学は2025年1月、白金を混合した金属磁性体ナノ薄膜が、従来よりも約5倍大きい光磁気トルクを発生したと発表した。光の強度を約5分の1に弱めても同じ効果が得られることから、光磁気デバイスの省エネ化が可能となる。
研究グループはこれまで、金属磁性体と重金属を積層したナノ薄膜を用いて、光磁気トルクの研究を行ってきた。積層ナノ薄膜に円偏光を照射すると、重金属内に電子スピン角運動量が発生。それに伴って光磁気トルクも発生するという。一方、単層の金属磁性体ナノ薄膜では、逆ファラデー効果により光磁気トルクが発生していたが、物理的な理解は進んでいなかったという。
研究グループは今回、金属磁性体の「コバルト」に、重元素の「白金」を混合した合金に着目し、その光磁気トルクを調べた。実験では、コバルトにさまざまな濃度の白金を最大70%まで固溶した「コバルト白金ナノ薄膜」を作製し、それぞれの光磁気トルクを測定した。
この結果、コバルト白金ナノ薄膜では、白金を混合していないナノ薄膜に比べ、約5倍という大きな光磁気トルクが発生した。また、白金元素に特有の相対論的量子力学効果である「スピン軌道相互作用」が、円偏光によって発生する電子軌道角運動量に起因した「光磁気トルク」を増強することも明らかになった。
今回の研究成果は、東北大学大学院工学研究科応用物理学専攻の抜井康起大学院生や、同大学学際科学フロンティア研究所(FRIS)の飯浜賢志助教(現在は名古屋大学准教授)、同大学材料科学高等研究所(WPI-AIMR)の水上成美教授らによるものである。
音波の新しい伝播現象を発見 次世代通信への応用に期待
半導体応用も可能な二硫化モリブデンナノリボンを合成
反強磁性体磁化ダイナミクスによるスピン流を検出
磁性と強誘電性を備える物質を160℃の高温で動作
高温エネルギー変換デバイスの早期社会実装を目指す
東北大ら、高屈折率で近赤外光を通す新材料を発見Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
記事ランキング