インセンティブや人材、資金に加え、エコシステム構築のもう1つの要素となるのが、顧客企業だ。Sherwani氏は、NSHのグループが提供するチップの主要顧客は5〜6社となる見込みだとした。
NSHのグループには、サウジアラビアをエレクトロニクスと先端材料の世界的な拠点にするために2023年に1000億米ドルの公的投資で設立されたAlatに加えて、Neom Future City projectや、1000億米ドル規模のTranscendence AI infrastructure projectを含む約30社のデータセンターもある。
Alatは、30以上の製品カテゴリーの製造を目指しているという。これには、半導体、ロボットや通信システム、高度なコンピュータ、デジタルエンターテインメント製品、ヘルスケア、建築、鉱山向け重機などが含まれる。AlatとLenovoはLEAPで、サウジアラビア製のノートPC、デスクトップ、サーバを数百万台製造する20万平方メートルの敷地の工場建設に着手すると発表した。生産開始は2026年を予定している。
LEAPでの別の講演では、元IntelおよびAMDのベテランで、2025年1月にシリコンバレーを離れてAlatの半導体事業戦略担当バイスプレジデントに就任したAli Ibrahim氏が、同社のチップ製造を確立するためのアプローチについて語った。
「半導体事業部門は、IDMファウンドリー、ファウンドリー、チップパッケージングというハイブリッドなアプローチを採用している。IDMファウンドリー側では、電力、センシング、エッジAIに重点を置き、ファブでは現在28nmと40nmに重点を置いている」(Ibrahim氏)
その後Ibrahim氏は、高性能コンピューティング(HPC)とデータセンター向けのチップ設計におけるいくつかの課題と、その解決策となるチップレットについて話を続けた。同氏は「エコシステムを『シリコン中心』の考え方からパッケージも含めた『システムレベル』の計画に変更する必要がある」と述べた。これには、IP(Intellectual Property)、EDA、OSAT(Outsourced Semiconductor Assembly and Test)といったエコシステム内の複数のベンダー間のコラボレーションが必要だ。
Ibrahim氏は「現在のチップレットソリューションの多くは単一ベンダー中心だが、さまざまなレベルで標準化の取り組みを伴うオープンなチップレットエコシステムが必要だ」と強調した。彼は、UCIe(Universal Chiplet Interconnect Express)、Arm、OCP(Open Compute Project)による取り組みのいくつかを紹介した。
「AlatとNSHの目標は、サウジアラビアに活気のあるチップレットエコシステムを構築することだ」とIbrahim氏は結論付けた。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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