産業技術総合研究所(産総研)は、テクノプローブやKeysight Technologiesと共同で、表面実装されたパワーデバイスのSパラメーター測定を簡便かつ安価に行えるシステムを開発した。開発したプローブを用いると、50k〜1GHz帯域のSパラメーターを測定できるという。
産業技術総合研究所(産総研)物理計測標準研究部門の岸川諒子主任研究員および、研究戦略企画部の堀部雅弘次長は2025年3月、テクノプローブやKeysight Technologiesと共同で、表面実装されたパワーデバイスのSパラメーター測定を簡便かつ安価に行えるシステムを開発したと発表した。開発したプローブを用いると、50k〜1GHz帯域のSパラメーターを測定できるという。
高周波回路において、効率よく電力を伝えるには高周波信号の反射や伝送特性を示すSパラメーターの測定が不可欠だ。ところが、表面実装されたパワーデバイスの平面電極と測定装置を接続するにはこれまで、測定装置側の同軸テストポートを平面電極の形状に合わせるためのテストフィクスチャーやキャリブレーション用デバイスを、非測定デバイスごとに用意する必要があった。
そこで今回、さまざまな形状の平面電極に変換し、測定装置側のテストポートに接続するためのプローブおよび、プローブを制御するためのプローブステーションを開発した。開発したプローブは、複数種類の電極形状に対応していて、50k〜1GHz領域のSパラメーター測定を手軽に行えるようになった。
また、開発したテストフィクスチャーの影響を取り除くためのキャリブレーション用デバイスも用意した。この結果、測定者がテストフィクスチャーやキャリブレーション用デバイスを作製する必要がないという。プローブのチップ間長さと被測定パワーデバイスの電極間長さが一緒であれば測定できる。しかも、1種類のプローブで複数種類のパワーデバイスを測定することが可能である。
研究グループは、従来のテストフィクスチャーを用いて測定した結果と、開発したプローブを用いて測定したデータを比較。これらの値が一致していることを確認した。なお開発したプローブおよび、プローブステーションの販売は、国内向けをテクノプローブが、海外向けをT Plusがそれぞれ担当する。
研究グループは今後、さまざまなパワーデバイスを測定できるよう、プローブおよびプローブステーションの改良に取り組む。今回は、プローブのグラウンドチップとシグナルチップの間隔が3.7mmだったが、チップ間の長さを変えての作製も可能だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.