研究中の最先端技術としては、電子の持つ磁気と電気の特性を同時に使う「スピントロニクス」技術から派生した「ニューロモルフィックデバイス」「スピンフォトディテクター」の2つが紹介された。
ニューロモルフィックデバイスは、シナプスとニューロンからなる人間の脳を、メモリスタ素子と半導体回路によって電気的に模したコンピュータデバイス。メモリとプロセッサが一体であることやデータをアナログで信号処理する特徴から、従来のAIデバイスと比べて100分の1の消費電力で駆動できる。
TDKのニューロモルフィックデバイスではスピントロニクス技術を活用し、データ保持性能が高い「スピンメモリスタ」素子を用いている。TDKは、これとセンサーを組み合わせたエッジAIソリューションを提供する計画だ。
TDK Investor Dayの会場では、6個の素子で構成されたニューロモルフィックデバイスを4基、合計24個の素子を用いて、音声分離のデモンストレーションを行っていた。2027〜2028年頃を目標に、100万個の素子を搭載したデバイスを開発中だという。
スピンフォトディテクターは、光信号を電気信号に変換するフォトディテクターに、スピントロニクス技術が使われたHDD用磁気ヘッドの磁性技術を応用したものだ。
20ピコ秒の超高速応答が可能なことや、従来の半導体フォトディテクターと比べて1000分の1の小型サイズを実現できること、半導体を使わないため素材の供給状況による影響を受けず、かつ基板材料の自由度が高いなどのメリットを有している。
超高速通信が求められるAIサーバ周りで優位性を発揮できるのに加え、スマートグラスや超高速イメージセンサー、検体の分光分析装置など、幅広い光デバイスでの活躍が期待できるとしている。
最高技術責任者(CTO)兼技術・知財本部長の橋山秀一氏は「データセンターがもたらす電力需要の増大は社会課題になっているとともに、通信の省電力化に貢献するとされるフォトニック集積回路の市場は大きな成長が見込まれている」としつつ、「TDKはこれ以外にも、さまざまな特徴的な技術でエコシステム全体に貢献し続けたい」と述べた。
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