ひずみで強く光るセラミックス材料 高感度センサーへの応用期待:原子配列のゆがみと酸素欠乏が作用
東北大学は、機械的な力が加わると発光する鉛フリーのセラミックス材料について、発光が著しく増強される仕組みを解明した。橋梁などインフラの劣化を可視光で診断できる高感度センサーや、自己発電型ウェアラブルデバイスなどへの応用が期待される。
東北大学は2025年9月、機械的な力が加わると発光する鉛フリーのセラミックス材料について、発光が著しく増強される仕組みを解明したと発表した。橋梁などインフラの劣化を可視光で診断できる高感度センサーや、自己発電型ウェアラブルデバイスなどへの応用が期待される。
機械的なエネルギーを電気や光に直接変換できる材料は、次世代のセンサーや環境発電を支える技術として注目されている。中でもマルチピエゾ材料は、応力に応じて発光する「メカノルミネッセンス(ML)」および、電気を発生する「圧電性」という特性を同時に示すことから、その応用研究が進んでいる。
研究グループは今回、プラセオジム添加ニオブ酸リチウムナトリウム(Li1-xNaxNbO3:Pr)に着目。大型放射光施設(Spring8)などの強力なX線を活用した手法により、特定の組成で発光が著しく増える仕組みの解明に取り組んだ。
実験では、Nb原子回りの局所的な原子配列や電子の状態を観察した。この結果、ML強度が最大となるLi1-xNaxの構成比(x=0.88〜0.9)は、菱面体晶から単斜晶へと変化するモルフォトロピック相境界(MPB)の結晶構造と一致することが確認できた。このMPB領域では、原子配列の特殊な「ゆがみ」が生じ、意図的に導入される「酸素欠陥」との相乗効果によって、ML強度が急激に増大することを突き止めた。
Li1-xNaxNbO3:Prの組成と発光強度の関係[クリックで拡大] 出所:東北大学
今回の研究成果は、東北大学国際放射光イノベーション・スマート研究センターの二宮翔助教と西堀麻衣子教授、同大学大学院工学研究科の徐超男教授らによるものである。
電力損失を半減した鉄系磁性材料を開発 EV応用に期待
物質・材料研究機構(NIMS)は、東北大学や産業技術総合研究所(産総研)と共同で、電力損失を従来の半分以下に抑えることができる鉄系磁性材料を開発した。高周波トランスや電気自動車(EV)の駆動用電源回路といった用途での採用が期待される。
リサイクルが簡単な水系電池実現へ、日東紡と東北大が新電極材料
日東紡と東北大学の共同研究チームは、常温(25℃)で水系電池の電極材料として活用できる「有機レドックス高分子」を開発した。この高分子は100℃以下の環境で原料に分解できることも実証した。リサイクルが容易な水系電池の開発が可能になる。
「内部が空洞」のマイクロバンプで低温接合、新たな半導体実装技術
東北大学の研究グループは産業技術総合研究所(産総研)と共同で、表面活性化接合とテンプレートストリッピングの技術を組み合わせて、中空ピラミッド構造のマイクロバンプを作製し、異種材料を低温で強固に接合できる半導体実装技術を開発した。
タングステンるつぼを用い2200℃以上で酸化物単結晶を作製
東北大学金属材料研究所は、融点が3400℃以上と高いタングステン(W)製るつぼを用いた結晶成長技術を新たに開発するとともに、この技術を用い2200℃以上でさまざまな酸化物単結晶を作製することに成功した。
指タッチで磁性を制御可能に? スピンドープ強磁性を発見
佐賀大学と東北大学、筑波大学、九州大学および、高エネルギー加速器研究機構らの研究グループは、応力発光半導体に希薄な磁性原子を添加することで、「スピンドープ強磁性」が現れることを確認した。
Ge半導体で「電気が流れやすくなる」方法を開発
産業技術総合研究所(産総研)と東北大学は、電極材料にテルル化ビスマス(Bi2Te3)を用い、この薄膜とn型Geを反応させることで、電子が流れやすい界面を形成することに成功した。エネルギー障壁をこれまでの約半分に低減できるという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.