10番は「プロセッサインメモリの市場機会と課題(PIM Opportunities & challenges)」である。講演スライドでは意図的にロジックとSRAMのシリコン面積がおよそ半分ずつのシリコンダイ写真(合成と思われる)を出し、これは「プロセッサインメモリ(Processor in memory)」なのか、「メモリインプロセッサ(Memory in processor)」なのかを問うていた。
ロジックとSRAMがシリコンダイ面積のおよそ半分ずつを占める。これは「プロセッサインメモリ(Processor in memory)」なのか、それとも「メモリインプロセッサ(Memory in processor)」なのか[クリックで拡大] 出所:2025 Proceedings of FMS、Objective Analysis基本的な違いは出発点にある。メモリにロジック回路を追加したシリコンダイが「プロセッサインメモリ」、逆にロジック回路の基本素子(プロセッサエレメント)にメモリあるいはメモリに類似の回路を備えたシリコンダイが「メモリインプロセッサ」だとみなせる。いずれもメモリアクセスのボトルネックを避けようとする試みだ。
一般的なのは「プロセッサインメモリ(Processor in memory)」だろう。「インメモリコンピューティング(In-memory computing)」「コンピューティングインメモリ(Computing in memory)」とも呼ばれる。最近になって活発なのは、AI向けのPIMに関する研究開発である。
ただしAI向けのPIMチップは、古くから存在していたとHandy氏は指摘する。Intelが1989年に開発したアナログニューラルネットワークの学習用チップ「80170NX ETANN」がそれだ。ちなみに「ETANN」とは「Electrically Trainable Analog Neural Network」(電気的に学習可能なアナログニューラルネットワーク)の略である。
「80170NX ETANN」は電気的にデータを書き換え可能な不揮発性メモリ(EEPROM)を重み付けのシナプスに採用した。不揮発性メモリをニューラルネットワークの重み付けに利用する試みは、現在では珍しくない。1989年当時は電気的にデータを書き換え可能な不揮発性メモリと言えば、EEPROMとNORフラッシュメモリくらい。非常に画期的な試みだった。
ETANNは適切な用途を見つけられず、商業的には失敗した。EEPROMのデータ書き換えに要する時間が数百μsと長いことが、学習過程で重み付けデータの書き換えを数多く繰り返すニューラルネットワークに向かなかったとされる。
最後の11番は「技術と市場がストレージとメモリを変化させる(Tech and market changes storage & memory)」である。
NANDフラッシュメモリが登場するまでは、半導体メモリ(DRAMおよびSRAM)とストレージ(HDDと光ディスク装置、テープ装置)の境界は明確だった。ストレージは磁気記憶(HDDとテープ)あるいは相変化記憶(光ディスク)を採用していた。半導体メモリは電荷量(DRAM)あるいは論理値(SRAM)の違いをデータに利用していた。
しかし最近ではNANDフラッシュメモリがSSDの記憶媒体となったことで、半導体メモリがストレージの領域に進出してきた。さらには大容量の次世代不揮発性メモリが、NANDフラッシュメモリよりも高速なSSDの候補として浮上している。メモリとストレージの境界は、曖昧になりつつある。
(次回に続く)
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