物質・材料研究機構(NIMS)や東京大学らの研究グループは、MOCVD(有機金属化学気相成長)法を用い、高品質な単層膜厚の「二硫化モリブデン(MoS2)」を、ウエハースケールでエピタキシャル成長させる技術を開発、その成膜メカニズムを解明した。試作したトランジスタの電子移動度を測定したところ、室温で66cm2/Vs、20Kで749cm2/Vsを達成した。
物質・材料研究機構(NIMS)や東京大学らの研究グループは2026年1月、MOCVD(有機金属化学気相成長)法を用い、高品質な単層膜厚の「二硫化モリブデン(MoS2)」を、ウエハースケールでエピタキシャル成長させる技術を開発、その成膜メカニズムを解明したと発表した。試作したトランジスタの電子移動度を測定したところ、室温で66cm2/Vs、20Kで749cm2/Vsを達成した。
シリコンを用いた半導体デバイスは、微細化による技術革新が限界を迎えつつある。特にサブ1nmノード世代では、短チャネル効果を抑制できる半導体材料が求められているという。こうした中、次世代ロジックデバイスのチャネル材料として注目されているのがMoS2だ。実用化に向けては、粉末原料CVD法を用いサファイア基板上にMoS2を成長させる研究などが行われてきた。しかし、大口径ウエハーへの対応や、電子移動度の低下などが課題となっていた。
研究グループは今回、MOCVD法に基づく新たな手法により、c面サファイア基板上にMoS2を成長させその過程を観察した。これにより、核の初期生成時には個々のMoS2結晶粒が、サファイア基板とあるねじれ角度を持つ原子配置で形成された。成長が進むと60°反平行ドメインや回転ドメインが合体する時、自発的に消滅した。最終的にエネルギーが最も安定する0°配向の単結晶が形成される「自己整合的成長機構」が存在することを発見した。
さらに、MoS2の結晶成長が単層膜厚で「自己停止」することも明らかにした。成長時間を長くしても2層目の成長はほとんど見られず、2インチスケールにわたって膜厚が均一に保たれていることを確認した。膜厚が自己停止するメカニズムは、300mmウエハー上で原子層膜を形成する時にも役立つとみている。
研究グループは、MoS2をSiO2/Si基板に転写してトランジスタを作製し、電子移動度の温度依存性を調べた。この結果、室温で66cm2/Vs、20Kでは749cm2/Vsという高い電子移動度が得られた。この温度依存性はフォノン散乱によるものだという。
今回の成果は、NIMSの佐久間芳樹特別研究員や東京大学大学院工学系研究科マテリアル工学専攻の長汐晃輔教授らの研究グループと、名古屋大学、筑波大学、東京エレクトロン テクノロジーソリューションズとの共同研究によるものだ。
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