東京大学と物質・材料研究機構(NIMS)、岡山大学、ジョージア工科大学および、コロラド大学ボルダー校の国際共同研究グループは、有機半導体を用い周波数920MHz(UHF帯)の交流電力を、5.2%という高い効率で直流電力に変換できる「整流ダイオード」を開発した。IoT向け無線通信などへの応用を視野に入れる。
東京大学と物質・材料研究機構(NIMS)、岡山大学、ジョージア工科大学および、コロラド大学ボルダー校の国際共同研究グループは2025年9月、有機半導体を用い周波数920MHz(UHF帯)の交流電力を、5.2%という高い効率で直流電力に変換できる「整流ダイオード」を開発したと発表した。IoT向け無線通信などへの応用を視野に入れる。
有機半導体は、印刷プロセスで成膜が可能なことから、フレキシブルなセンサーや電子回路、太陽電池などを製造できる材料として注目されている。どこにでも貼り付けて機能するIoT素子を実現するには、無線によって情報や電力をやり取りする機能が不可欠だ。ただ、数メートル離れた距離で通信を行うにはUHF帯での通信が必要となり、従来の有機半導体素子では動作速度が十分ではなかった。
共同研究グループは今回、還元性を備えた二量体錯体を電極表面に作用させる手法を用いた。この錯体が電子を供給することで、電極表面に電子が注入される。そして逆符号の電荷を持つ錯体カチオン分子が、単分子膜の厚みで自己組織的に吸着する。その後、下部電極の上に有機半導体インクをコーティングし、さらに上部電極を重ねることで有機整流ダイオードを作製できた。
試作したダイオードは、電圧方向によって流れる電流値が1000倍以上も異なるなど整流特性を示した。下部電極から有機半導体への電子注入はスムーズで、電圧2Vで100A/cm2という電流密度を実現した。
優れた注入特性は、表面処理によって電極の仕事関数が大きく変化したためだという。実際に、金薄膜の仕事関数は4.8eVから3.7eVに低下していることを確認した。さらに、今回得られた低い仕事関数は、大気中にさらした後でも安定して維持されていることを確認した。
下部電極からは、有機半導体のLUMOに対し効率よく電子が注入される。これに対し上部電極からの電子注入には高い障壁があり、電流は一方向に流れやすくなる。
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