2009年に6500万米ドルを投資してAMDのモバイルグラフィックス技術を買収したQualcomm。今後は、Microsoftの「DirectX 11」をサポートしたり、「Adreno」を高速化したりするなど、モバイル機器向けのグラフィックス分野での戦略を積極的に進めていくという。
Qualcommでインターネットサービス部門とイノベーションセンターのプレジデントを務めるRob Chandhok氏は、「当社は、モバイルグラフィックス分野で競合他社に後れを取っているとは考えていない」と述べた。
同氏は、スペインのバルセロナで開催された携帯電話関連の国際展示会「Mobile World Congress(MWC) 2012」(2012年2月27日〜3月1日)で、「当社は、世界中のどの半導体メーカーよりも多くのGPU(Graphical Processing Unit)を出荷している。当社のチップは、現時点ではMicrosoftのマルチメディアAPI『DirectX 11(DX11)』には対応していないが、モバイル機器に最適なアーキテクチャを採用している」と述べた。
その一方で、Qualcommが初めてDX11の対応に取り組んでいることを明らかにした。ただし、「DX11に対応するには、さまざまなチップを付け加える必要があるため、従来に比べると技術が非常に複雑になる」(同氏)という。
また、Chandhok氏は「当社がグラフィックスの分野で競合他社に後れを取っているとは考えていない」としながらも、優秀なグラフィカルエンジニアを集めて、GPUコア「Adreno」の高速化に取り組んでいることも明かした。
Chandhok氏は、「IntelやTexas Instruments(TI)などと、同じグラフィックスIP(Intellectual Property)コアを採用するのか」という質問に対し、「当社は、2009年に6500万米ドルもの多額の投資を行って、AMD(Advanced Micro Devices)のモバイルグラフィックス技術を買収した。このため、競合他社のようにImagination TechnologiesのグラフィックスIPコアを使う必要はない」と答えた。
また、Chandhok氏は、「汎用プロセッサ分野では、Qualcommは他社と一線を画している」と述べる。
同氏は、「当社が注力しているのは、搭載するコアの数を増やすことではなく、ユーザーエクスペリエンス(ユーザー体験)を向上することである」と述べた。これは、TIがたびたび語ってきたことでもある。
Chandhok氏は、「Qualcommが最も重視しているのは、当社のチップを搭載したモバイル機器を手にしたユーザーに、どのような体験を提供できるかということだ」と語った。
同氏は、「当社は、多くのシステムの最適化を手掛けている」と述べ、ユーザーエクスペリエンスとシステムとの最適なバランスを考慮しながら、ソフトウェアをチップに統合することに、いかに多くの労力を投じているかを説明した。
Chandhok氏は、「興味深いことに、より多くのコアを搭載したチップが、より優れた性能を提供できるとは限らない。コアの多さが、性能に悪影響を及ぼす場合もある」と語っている。
同氏は、Qualcommの動作周波数が1.5GHzのデュアルコアCPU「Snapdragon S4」(MSM8960)と、同1.3〜1.4GHzのクアッドコアCPUとの性能比較試験の結果を例に挙げ、「デュアルコアCPUの方が、クアッドコアCPUよりも性能が優れていることが多い」と述べた(図1)。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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