ソフトウェアのサポートはどうだろうか。Androidアプリケーション全体の約85%が、「Dalvik Virtual Machine」と呼ばれるAndroid内の仮想マシン上で動作している。現在Android向けのオンラインストア(Google Apps Marketplace)で公開されている50万本弱のアプリケーションのうち、約8万本は、ARMアーキテクチャ上でネイティブ実行するタイプだ*2)。
*2) MIPSアーキテクチャのSoCを搭載したAndroidタブレットでは、8万本のアプリケーションが直接には動作しないということ。
MIPS上でこれらのAndroidアプリケーションを実行するコードは、既に開発されている。Googleが、標準リリースの一部としてこのコードを採用することになれば状況が変わる。MIPSアーキテクチャをサポートする上で必要な全てのソフトウェアを統合しなければならないという面倒な作業が、ほぼ必要なくなるだろう。
Rohatgi氏は、「最も重要かつ困難な課題は、MIPSベースのAndroid向けに、全てのツールチェーンを完成させることだ。近々、AndroidのMIPS ABI実現に不可欠なGoogleの支援も受けられる予定だ」と付け加えた。
またRohatgi氏は、MIPS対応を強化するため、アプリケーションの開発を手掛ける大手との協業も進めている。MIPSエミュレータ「MagiCode」は既に、ダウンロードで入手可能なため、最終消費者はMIPSシステム上でARMベースのAndroidアプリを実行できる。
中国の携帯電話機向けチップ開発企業にとって朗報となるのがコストの話だ。ARMの「Cortex-A9」のライセンス料が500万米ドルであるのに対し、MIPSコアのライセンス料は、その何分の1かになるとみられることだ。
Ingenic SemiconductorのSoCは、1.2GHzで動作するため、性能では「Cortex-A8」に匹敵する。また2012年後半には、MIPSのCPUコアを2つ搭載したバージョンのサンプル出荷が始まる予定だ。競合相手としてCortex-A9にターゲットを絞った品種だ。ただし、消費電力量はARMチップよりもわずかに大きくなるという。
Rohatgi氏によると、「Cortex-A15」をターゲットとする64ビットのIngenic Semiconductorチップは現在、設計の初期段階にあり、2013年後半には市場に投入できる予定だという。
一方米Intelも、Googleとの密接な協業関係を構築することにより、x86に対するARMと同様のAndroid対応実現を目指している。GoogleのAndroid関連事業を率いるアンディ・ルービン(Andy Rubin)氏は、2011年秋に開催された「Intel Developer Conference 2011」で登壇し、GoogleとIntelとの緊密な連携を公にアピールしている。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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