無線LANが普及するにつれ、複数のアクセスポイントが同じ環境に存在していることによる干渉の問題が無視できなくなる。NTT未来ねっと研究所は、この干渉の問題を解決する新技術を開発し、ワイヤレス・テクノロジー・パーク2012で披露した。
社会インフラといってよいほどに普及しつつある無線LAN(Wi-Fi)。最近では、国内の通信事業者各社が、3G回線からデータトラフィックを回避させることを目的に、公衆無線LANサービスの強化を続けている。
しかし、既に無線LANが混雑し、当初想定していたような高いデータ伝送速度を得にくくなっている場所が出てきているのも事実だ。駅や商業施設、マンションなどのように多数のアクセスポイントが設置されている場所では、隣接するネットワークからの干渉を受けることで、データ伝送速度が大幅に低下してしまう。無線LANが普及するにつれ、より顕著になる問題だろう。
この問題をいかに解決するか。NTT未来ねっと研究所は、干渉が発生してしまう状態でも、無線LANの複数のアクセポイントが相互に連携し、自律的に干渉を抑制する新技術を開発し、2012年7月5〜6日にパシフィコ横浜で開催された「ワイヤレス・テクノロジー・パーク2012」でデモを披露した。「展示会で広く紹介するのは今回が初」(同研究所)という。
一般に干渉を抑制するには、データをやりとりする時間を分ける、周波数を変える、送信電力を下げるといった方法がある。ただ、いずれの方法もデータ伝送速度を犠牲にしてしまう。NTT未来ねっと研究所の方法は、上に挙げた3つの方法のどれでもなく、「空間で分割する」という方法を採用した。具体的には、IEEE 802.11acのオプション仕様である「マルチユーザーMIMO」の実現に使うビームフォーミング技術を活用し、アクセスポイントから狙った端末にだけデータを届けられるようにした(マルチユーザーMIMOについての関連記事その1、その2)。
「複数の端末があるときに、アクセスポイントをうまく連携させ、全体のデータ伝送速度を最大化するアルゴリズムに独自性がある」(同研究所)という。
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