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LEDを一新した「GaN」、次は電力を変えるパワー半導体 GaNデバイス(3/3 ページ)

» 2012年08月10日 18時20分 公開
[畑陽一郎,EE Times Japan]
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GaNとSiCを組み合わせたサンケン電気

 サンケン電気は、2012年7月、385Vを入力し、200Vで出力するDC-DCコンバータ回路を試作した。500kHzでスイッチング動作させた場合、変換効率は97%弱に達するという(図3)。試作回路では0.6kWの電力を変換している。500kHzというスイッチング周波数をこのような条件下で実現することは、Siパワー半導体では難しい。

図3 500kHz動作のDC-DCコンバータ回路 絶縁型電流共振DC-DCコンバータである。1次側はハーフブリッジ、2次側はダイオード整流である。後述するドライバ内蔵のGaN FETを2個、SiC SBD(ショットキーバリアダイオード)を2個使った。写真では、入力電圧384.5V、入力電力0.6196kW、出力電力0.5999kWと表示されており、効率は96.817%である。2012年7月に開催されたTECHNO-FRONTIER 2012で展示したもの。

 ノーマリーオフ動作はどのように実現したのだろうか。「HEMT構造を採ったが、断面構造と材料の工夫によってノーマリーオフ動作を実現している。外部にSi MOSFETなどを接続したカスコード構成ではない。一部厳しい条件では誤動作が発生する可能性があるため、SiCのゲートドライバと併せて1パッケージ化した」(サンケン電気 技術本部開発統括部次世代デバイス開発部GaN開発グループの金子信男氏)。Si基板を利用し、バッファー層を設けて、その上にAlGaN/GaN構造を作り込んだ。

 同社は2001年からGaNパワー半導体の開発を続けている。開発のロードマップはこうだ。2012年末から2013年にかけてGaNパワー半導体のパッケージ品の量産を開始し、その後、SiCパワー半導体の量産へと進む予定だ。

 「GaNパワー半導体では10〜20A、300〜600Vの領域を狙う。なお当社は、20〜50A、600〜1200Vの領域を対象として、SiCの研究開発も続けている」(サンケン電気)。

ロームはノーマリーオフ動作の新手法を開発

 ロームはSiC SBDとSiC MOSFETを組み合わせた「フルSiCパワーモジュール」の量産開始を2012年3月に発表するなど、SiCで先行している(関連記事)。

 次はGaNだ。ノーマリーオフ化の手法はどうするのだろうか。「ノーマリーオフ化のために、カスコード接続は利用しない。なぜならSiを併用するとSiのスイッチング特性で全体が律速されてしまうからだ」(ローム 研究開発本部先端化合物半導体研究開発センターリーダーの黒田尚孝氏)。

 ロームはGaNだけでノーマリーオフ動作を実現する。p型のGaNをゲートの下に作り、pn接合の空乏層でゲートを制御し、ノーマリーオフ動作をさせる研究が各社で進んでいる*5)。ただし、この手法だと、p型のGaNの特性に引っ張られて、GaNの最大のメリットである高速スイッチングが犠牲になるという。そこで、ロームではp型のGaNを使わず、ゲートの直下をエッチングで薄くし、空乏化させることで、ノーマリーオフ動作させる手法を開発したとした。「数十MHz動作にはまだ成功していないが、ノーマリーオフ特性は悪くない」(同氏)。

*5) Efficient Power Conversionは、量産出荷中の「eGaN FETs」シリーズ(耐圧40〜200V)に同手法を採用している。パナソニックも同手法に基づいた素子を開発中だ。

 同社はGaNで耐圧100〜600Vの領域、電流は10〜100Aの領域を狙う(図4)。SiCとの住み分けはスイッチング周波数だという。「数MHzまでの領域はSiとSiC、10MHz以上がGaNだと考えている。例えばEVの無線充電ではISM帯を使うことが考えられる。このとき13MHzや16MHz、21MHzでのスイッチングが必要だ。これはSiCでも厳しい領域だ」(黒田氏、図5図6)。

図4 GaNを採用した昇圧チョッパ回路 AlGaN/GaN HEMTを利用した(図中央の丸い穴が開いた長方形のチップ)。以下、2012年7月に開催されたTECHNO-FRONTIER 2012で展示したもの。
図5 昇圧チョッパ回路の構成と動作 スイッチング周波数10MHzで動作させたときの状態。なお、図中左下にあるLTC4449(リニアテクノロジー)は、同期整流式降圧DC-DCコンバータのMOSFETに向けたゲートドライバIC。
図6 ロームが考えるGaNパワーモジュールの用途 スイッチング周波数を高めることで、周辺部品を小さくできること(図左)の他、ワイヤレス給電において、コイル間での変換効率が高まるメリットを挙げている(図右)。

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