NAND型フラッシュメモリの微細化と大容量化は限界に近づいている。メモリセルを垂直に積み上げる3次元構造のNANDフラッシュの開発も進んでいるが、MRAMやPCMといった次世代不揮発性メモリが、NANDフラッシュに代わって大きく伸びることが予測されている。
フランスの市場調査会社であるYole Développementによると、MRAM(Magnetic RAM:磁気メモリ)とPCM(Phase-Change Memory:相変化メモリ)は、2016年までに年間の売上高が10億米ドル規模の市場に成長するという。
同社は、「次世代不揮発性メモリとしては、MRAMとPCMの他、ReRAM(Resistive RAM:抵抗変化型メモリ)、FeRAM(Ferroelectric RAM:強誘電体メモリ)が挙げられる。当社は、エンタープライズ向けストレージ、産業/輸送、携帯電話、大容量ストレージ、ICカード向けマイコンという5つのアプリケーション分野が、これらのメモリの市場拡大を後押しすると予測している。ただし、その規模は、DRAMやNAND型フラッシュメモリといった現在の標準的なメモリに比べるとはるかに小さい。DRAMとNANDフラッシュの2012年の売上高は、合計で500億米ドル以上に上る」と述べている。
次世代不揮発性メモリの世界市場は、2012年の2億900万米ドルから、年平均成長率46%で成長し、2018年には20億米ドルに達するとみられている。同市場をけん引するのはMRAMとPCMだ。これらのメモリの年間売上高は、2018年に16億米ドルに達する見通しだという。
同社は、「次世代不揮発性メモリにとって、最大の市場機会と考えられるのが、エンタープライズ向けストレージだ。スピン注入磁化反転型MRAM(STT-MRAM:Spin Transfer Torque-MRAM)とPCMが、キャッシュメモリとして使われるだろう」と予想している。
さらに、Yole Développementは「現在、大容量ストレージにはNANDフラッシュが使われているが、2017〜2018年頃に3次元構造(3D)のReRAMの搭載が始まる」とみている。これは、3次元構造のNANDフラッシュ*1)の拡張性が限界に近くなると予想されている時期に重なる。これ以降、NANDフラッシュからReRAMへの置き換えが急速に進むとされている。
*1)3次元構造のNANDフラッシュとは、メモリセルをシリコンウエハーの表面に対して垂直に積み上げたもの。
Micron Technologyは2012年に、携帯電話機向けの1GビットPCMを発売した。また、2015年までには、さらに容量が大きいPCMが市場に投入されるとみられている。こうした予測を受け、携帯電話機では、マルチチップパッケージのNOR型フラッシュメモリに代わり、PCMの採用が進むとされている。
一方、STT-MRAMは消費電力が低く拡張性に優れていることから、SRAMに代わってSoC(Sytem on Chip)に搭載されるようになると予想される。
Yole Développementはまた、「マイコンでも、組み込み型フラッシュメモリに代わって、MRAMかPCMが採用される」との見解を述べている。
FeRAMは、容量が比較的小さな製品しかないため、産業および輸送分野に特化した形で、年平均成長率10%で伸びるという。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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