Qualcommは、LTEに対応する携帯電話機向けの新製品群について、新たな構想を明らかにした。世界各国でLTE向けに使われる40種類の周波数帯をサポートするというものである。
Qualcommは、LTEに対応する携帯電話機向けのチップについて、新たな構想を明らかにした。世界各国でLTE向けに使われる40種類の周波数帯をサポートすることで、端末をより容易に開発できるようにすることを目指す。この構想の中核となるのは、CMOS集積技術とSiP(System in Package)技術を適用したRF製品ファミリである。その出荷は、2013年後半に開始できる見込みだという。
米カリフォルニア州サンフランシスコで開催された半導体集積回路技術の国際会議「ISSCC(IEEE International Solid-State Circuits Conference) 2013」(2013年2月17〜21日)では、Ericssonのエンジニアが、「LTEの設計者にとって最も重要な懸念事項の1つは、世界各国で使用される周波数帯がそれぞれに異なっていることだ」と述べていた。
2013年2月25〜28日にスペイン バルセロナで開催される携帯電話の国際展示会「MWC(Mobile World Congress) 2013」には、Altair Semiconductor、Broadcom、Intel、NVIDIAや、富士通、ルネサス エレクトロニクスなどが出展企業として名を連ねている。Qualcommも、スタンドアロン型や統合型の新たなLTEデバイスを数多く出展する予定だ。
Qualcommの「RF360ソリューション」には、同社にとって初となるCMOSパワーアンプとアンテナスイッチを1つのダイに集積したチップが含まれている。このチップと、SAWフィルタとデュプレクサを集積したチップを、3次元実装技術を用いてわずか1mmの厚さで統合しているという。
このような方法を採用していることから、RF360ソリューションの価格はかなり高額になる。しかし、基板上の実装スペースを従来比で50%に削減することが可能だという。Qualcommのモデム担当プロダクトマネジメントディレクタを務めるPeter Carson氏は、「携帯電話機のメーカーは、このRF製品を採用することにより、ディスクリート部品やパワーアンプなどを追加で搭載するスペースを確保できる。その結果、既存の携帯電話機に比べて幅広いローミングバンドをサポートすることが可能になる」と述べている。
Qualcommは、このRF製品と併せて、携帯電話向けの新たなトランシーバ製品もリリースする。この製品では、同社の従来製品に比べてポート数を倍増することが可能だという。また、同製品は、LTE-Advancedのキャリアアグリゲーション機能をサポートする。この機能は、複数の周波数帯を組み合わせることによって、より高いデータ伝送速度を実現可能にするものだ。なお、このトランシーバ製品やRF製品がそれぞれサポート可能な周波数帯の数については、詳細を明らかにしていない。
Qualcommのロードマップでは、新たなトランシーバとRFフロントエンドを市場に投入することで、より多くの周波数帯をサポートしていくことになっている。初期段階に投入する製品では、まずは同社のプロセッサ「Snapdragon 800」やハイエンドのデータモデム「Gobi」をサポートするという。
Carson氏は、「まずハイエンド製品に対応することに決めたのは、LTEに関する需要がそこにあったからだ。グローバルローミング機能を備えた携帯電話機を製造する端末メーカーにとっては、最終的にコストの削減を実現できるというメリットがある」と述べている。
この他、Qualcommは2種類の新型チップも発表する。1つはコンフィギュラブルなアンテナマッチングチューナであり、700〜2700MHzの周波数範囲に対応することができる。もう1つの電圧コントローラは、パワーアンプの消費電力や発熱を抑えることに利用できるという。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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