Wi-Fi Allianceでは、データやディスプレイ、オーディオなどの用途でWiGig対応機器の開発/普及を支援するために複数のプロジェクトを立ち上げた。この追加アプリケーションプログラムは、以前にWiGig Allianceがプロトコルアダプテーションレイヤ(PAL)として開発した仕様をWi-Fi Allianceに移行したものである。例えば、家庭やオフィスにおいてPC周辺機器やディスプレイ装置をワイヤレスで接続するためのドッキング技術、離れた部屋に置かれた機器間で非圧縮の映像データをストリーミングやミラーリングする技術、SDやPCIeを経由した入出力技術、などがある。これら追加アプリケーションのための相互運用性認定プログラムは2015年より提供される予定だ。
Wi-Fi Allianceでは、WiGig普及に向けて、関連する業界団体との連携も強めている。例えば、Wi-Fi AllianceはWiGigシリアル拡張仕様をUSB Implementers Forum(USB-IF)に移管した。USB-IFは、この仕様をメディア非依存のUSB仕様として開発するための基盤として用いる予定だ。Wi-Fi Allianceは、Video Electronics Standards Association(VESA)とも連携協定を結んだ。WiGig CERTIFIED製品の一部に実装が予定されているWiGigディスプレイ拡張仕様を組み込んだ製品認定を考慮したものだ。PCや携帯端末と4Kテレビやプロジェクタをワイヤレスで接続することが可能となる。
Felner氏は、ABI Researchが調査したWi-FiとWiGig対応のチップセット出荷予測も紹介した。これによると、802.11acとWiGigを統合したチップセットが、今後のワイヤレス通信市場をけん引していくことが分かった。
なお、説明会場ではWi-Fi Allianceのメンバー企業でもあるWilocityとDisplayLinkの協力を得て、WiGig技術を使ったデータ伝送のデモが行われた。PC内にある4K映像をディスプレイ装置に伝送して高画質の映像を表示させた。もう1つは無線LANアクセスポイントを用いて802.11ad(WiGig)と802.11nの伝送速度の比較を行った。
最近、Wi-Fi Allianceでは900MHz帯を使ったWi-Fi「IEEE 802.11ah」規格に注目している(関連記事:サブギガ版Wi-Fi「IEEE 802.11ah」、2015年実用化へ)。通信できる範囲などが広く、これまでのWi-Fiアプリケーションとは全く異なる用途が見込めるからだ。IEEE 802.11ah規格の採択に関しては、早ければ2013年9月末にIEEEで最初の投票が行われる予定で、2016年1月に正式発行となる見通しだ。
Wi-Fi AllianceにおけるIEEE 802.11ahへの取り組みをFelner氏に聞いた。「多くのメンバーが802.11ahに関心を持っている。さまざまな検討は行っているが現時点で具体的な活動は始まっていない。1年以内に802.11ahに関する調査が始まることになろう」と話す。特に、「800MHz帯を使ったWi-Fiは、通信距離がこれまでより長く、消費電力も小さい。このため、マシンツーマシン(M2M)など『モノのインターネット化』に適している。従来のホームやオフィスにおけるネットワークとは異なるアプリケーションとなろう」と語った。さらに、「9月中にも予定されているIEEEでの投票結果によって、802.11ah規格に関連した開発に弾みがつくことになろう」と述べた。
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