ウェアラブルな医療機器への注目が高まっている。映画「スタートトレック」に登場する「トリコーダー」のようなモバイル医療診断機器の開発を促進すべく、クアルコムは「Tricoder X-Prize」というプロジェクトを実施する。
Qualcomm(クアルコム)の子会社Qualcomm Lifeでグローバル戦略/市場開発担当バイスプレジデントを務めるDonald Jones氏は、米国カリフォルニア州ナパで2013年11月7日〜8日に開催された「MEMS Executive Congress US」において、プレゼンテーションを行った。同氏はその中で、「今や、ウェアラブルな医療用センサーを、アプリ(アプリケーション)で監視することが可能になった。ばんそうこうのように貼り付けられる、使い捨てのスマートパッチなども開発されている。従来の大型医療用機器は将来的に、終えんを迎えることになるだろう」と述べている。「今後は、医療機器そのものが不要となり、なくなっていくかもしれない」(同氏)。
Jones氏は、「Mobile and the Future of Health and Wellness(携帯型ヘルスケア機器の今後について)」と題するプレゼンテーションの中で、ウェアラブルアクセサリデバイスや医療機器搭載パッチの構想について話した。これらの機器を身に付けて、スマートフォンやタブレット端末を医療用診断機器として利用するというものだ。今後、市場への投入はさらに進むという。同氏によれば、ヘルスケア市場向けウェアラブルセンサーの出荷数量は、2017年までに1億7000万個を上回る見込みだ。
Qualcomm Lifeは、パートナー企業とのエコシステムを構築することにより、医療診断や治療など、あらゆる側面からウェアラブル機器をサポートする取り組みを進めている。同氏によると、「Qualcomm Lifeは、患者が自分で使用できる医療機器の開発に向けて取り組んでいる。既に、スマートフォンを使って一連の健康診断を行うことが可能なウェアラブルアクセサリを、数多く投入している」という。
Qualcommがスポンサーを務める「Tricorder X-Prize」は、1979年に公開された映画「スタートレック」で登場した医療用スキャナー「トリコーダー」のように、医療診断を即座に行うことが可能な機器の実現を目指そうという試みだ。上位入賞チームには1000万米ドルの賞金が授与されるという。世界各国から多くの開発チームが参加し、所定の15種類の疾病を診断したり、重要な健康基準データを伝送したりすることが可能な携帯型機器の開発に取り組んでいる。
Jones氏は、参加チームの1つとして、NASAエイムズリサーチセンター(NASA Ames Research Center)に本社を置くScanaduを取り上げ、同社が開発した本格的な“トリコーダー”「Scanadu Scout」について説明した。このScanadu Scoutは、血中酸素濃度や心電図、ストレス値、心拍数、体温、脈波伝播時間など、さまざまな数値を測定できるという。
またQualcommは、携帯型医療用測定機器をクラウドに接続して、多変数解析を行えるインフラの開発に取り組んでいる。同社が買収したベンチャー企業HealthyCirclesは、患者やその家族が、医療専門家や介護士などが使用している専用システムに接続することができる、サービス型ソフトウェアを提供する。アクセスが簡単な統合型の相互運用システムを提供することにより、治療計画の遠隔監視/管理が可能になる。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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