スマートフォンやタブレット端末の内蔵カメラ、PCのディスプレイに取り付けられたWebカメラを使い、人間の顔を5秒間撮影するだけで、脈拍を計測できる――。富士通研究所が、このような技術を開発した。自分自身の健康チェックのほか、高齢者の体調の測定、空港やイベント会場でのセキュリティチェックといった用途も想定しているという。
富士通研究所は2013年3月18日、人間の顔を撮影した映像から、リアルタイムに脈拍を測定する技術を発表した。
スマートフォンやタブレット端末の内蔵カメラや、PCのディスプレイに取り付けられたWebカメラで顔の静止画像を撮影すると、その画像のわずかな輝度の変化を基に、1分間当たりの脈拍数を計測する。最短5秒で計測でき、装置を使ったり、手首に指を当てたりして物理的に脈拍を計ったりする場合と比べて、1分当たりの脈拍の誤差は±3拍程度だという。スマートフォンやPCで手軽に脈拍をチェックできることから、自分の体調管理だけでなく、テレビ電話を利用した高齢者の見守りや、空港やイベント会場における体調不良者、不審者のチェックなど、さまざまな用途を想定している。
顔の表面は、血流によってわずかな輝度の変化が生じる。今回開発した技術は、この輝度の変化から脈拍を測定するものだ。具体的には、血液中の成分の1つであるヘモグロビンが緑色の光を吸収することを利用し、緑色成分の輝度の変化をソフトウェアで検出する。
脈拍を測定する仕組みは次の通りである。撮影した顔の動画の各フレームについて、色成分(RGB:赤、緑、青)ごとに輝度の波形を生成する。それら3つの波形に共通するノイズを除去したあと、緑色成分の波形のピーク値から脈拍数を算出する。
富士通研究所は、「屋内外といった周囲の環境や、化粧の有無に関係なく、脈拍を測定できることは実証済みだ」と説明する。ただし、逆光や極端に暗い所など、顔を検出しにくい場所で使用するのは難しいという。
今回発表した脈拍の測定技術は、横を向いたり下を向いたりといったように、顔を動かすと、測定を自動的に一時停止する機能を備えている。例えば、オフィスで働くユーザーの脈拍を測定する場合、ユーザーが離席したり、横を向いたりすると計測は一時的に止まる。カメラがユーザーの顔を真正面からとらえ、そこから顔向きを変えない状態で5秒間以上の動画を撮影できれば、脈拍の測定を再開する。
なお、デモに使用したPCはWindowsに対応しているが、技術的にはWindows以外のOSで動作させることも可能だとしている。カメラは、一般的なWebカメラ(解像度がVGAで、フレームレートが20〜30フレーム/秒)であれば、特に問題なく使用できるという。
富士通研究所は、この脈拍測定の技術について、2013年中の実用化を目指す。脈拍以外の測定にも応用できるかどうかについては、「そうした可能性はあるので、さまざまな用途を検討していきたい」と説明した。
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