メディア

ディスクの多重故障に対応した高速リカバリ方式を開発メモリ/ストレージ技術

富士通研究所は2014年10月、ストレージディスクに多重故障が生じた場合でも短時間で復旧させるリカバリ方式を開発した。復旧時間を従来より2割以上短縮できるという。

» 2014年10月06日 12時35分 公開
[EE Times Japan]

復旧時間を2割削減

 富士通研究所は2014年10月6日、ストレージディスクに多重故障が生じた場合でも短い時間で復旧させるリカバリ方式を開発したと発表した。復旧時間を従来より2割以上短縮できるという。

 近年、Webサービスなどのコンテンツデータ量は、「年率70%を超える速度で爆発的に増加している」(富士通研)という。その中で、コンテンツデータの消失対策として、三重のコピーを持つ方式が取られることがあるが、コンテンツの容量増加に対応するストレージの増量に伴うコスト増が無視できなくなっている。三重コピーは保護したいデータの3倍のストレージが必要となるため、容量効率を上げるために、近年では企業の基幹データ保護などで古くから用いられているRAID技術が見直されている。各データをコピーで保護する代わりに、複数データをまとめて保護する冗長データ(パリティ)を導入し、三重コピーよりも大幅に少ない冗長データで同等のデータ保護が可能になる。

三重コピー技術からRAID技術への切り替えによる容量効率改善のイメージ (クリックで拡大) 出典:富士通研究所

RAID技術の課題

 現在広く普及しているRAID5やRAID6などの標準的なRAIDの技術では、全てのパリティが全データを保護する方式が用いられている。あるディスクが故障した際に、そのディスクに格納された各データを保護するパリティに加え、残存データを全て使って消失データを復旧する必要があるため、膨大なデータ転送による復旧の長時間化や、復旧中のデータ消失のリスクが増大することが問題となっている。

従来RAID技術での大量データ転送を伴うデータ復旧 出典:富士通研究所

 例えば、毎秒15MバイトのランダムI/O性能で4Tバイトの容量を持つディスクを48個用いた場合、「ディスク2台の同時故障からの復旧に10時間以上掛かる計算になる」(富士通研)。

RAID技術の信頼性を維持しつつ

 これに対し、富士通研では、従来のRAID技術の信頼性を確保しながら、高速な障害復旧が可能なリカバリ方式を開発。以下の2つの技術で、高速なリカバリ方式を実現した。

データ復旧処理量を削減するパリティ保護範囲の多層化

 まず、各パリティが保護する範囲を、全てのデータではなく、一部分のデータに限定。その上でいずれのデータの消失も保護できるように、各パリティの保護範囲を一部が重なり合うようにずらしながら重ね合わせる(瓦型)独自の方式を開発した。「ディスク故障時に、消失データを保護していた複数のパリティのうち、復旧に要するパリティとデータの合計が最少になるものを選択することで、復旧処理時間を短縮できる」(富士通研)という。

パリティ保護範囲の多層のイメージ化 出典:富士通研究所

 また、データとパリティは、それぞれストレージシステムを構成する異なるディスクに分散して配置。ディスク故障時は、そのディスクに格納されていた各消失データに対して、最少の復旧処理量になるようなパリティを選択して復旧する。

ディスク故障に伴い消失したデータの高速復旧 (クリックで拡大) 出典:富士通研究所

 富士通研では二重障害までを復旧する比較実験を実施した結果、「48本の4Tバイトディスクを用いて、最少の復旧処理量になるようなパリティの保護範囲を構成した場合、従来のRAID技術に比べ約20%以上の復旧時間短縮が可能であることを確認した」とする。

利用シーンに応じて柔軟に変更できるパリティ保護範囲の構成

 また、富士通研では、パリティ保護範囲を瓦型に多層化する構成では、復旧処理時間、データ消失確率、容量効率は、互いにトレードオフの関係になるため、格納データの重要度に応じて最適になるように、柔軟に調整できるパリティ保護範囲の構成を用いた。

2015年度中に実用化へ

 これらの開発成果から、富士通研では「データ量が爆発的に増加しているWebコンテンツなどのデータを蓄積しながら、そのディスク故障からの復旧を高速に行うことが可能となる。これにより、クラウドサービスやWebサービスの拡大で増加するコンテンツを格納したストレージに対する障害復旧を迅速に実施できる」とし、リカバリ技術の改良を進めながら2016年3月期中の実用化を目指す方針。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSフィード

公式SNS

All material on this site Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
This site contains articles under license from AspenCore LLC.