透過率の高さは消費電力にも大きく影響する。従来の液晶ディスプレイと同じ電力を使えばより高い輝度で表示できる一方、同じ明るさならより省電力になるというわけだ。CEATEC会場では、従来の液晶ディスプレイと同じ輝度の際の消費電力の違いを示すデモンストレーションを行っていた。
MEMS-IGZOディスプレイは、RGBのLEDバックライトの時間をずらして順次点灯させることでカラーフィルターを用いずにカラー化を実現する「フィールドシーケンシャル方式」を採用している。「毎秒60フレームで駆動(駆動周波数は非公開)させるために必要なMEMSシャッターの速度は100μ秒。このスピードを実現するのにIGZOでないとダメだった」(同社)。
IGZOはIndium(インジウム)、Gallium(ガリウム)、Zinc(亜鉛)、Oxygen(酸素)から生成される酸化物半導体で、シャープが世界で初めて量産化に成功したもの。電流を流す速度(電子移動速度)が従来のアモルファスシリコンに比べて20〜50倍も速いのが特徴だ。
「MEMSディスプレイはPixtronixの技術だが、MEMSシャッターのスピードなどはシャープ以外では実現できなかった。他社がまねできないオンリーワン技術がMEMS-IGZOディスプレイに盛り込まれている」(同社)
期待のMEMS-IGZOディスプレイだが、気になる製品化の予定を聞いてみた。
「MEMS-IGZOディスプレイ搭載のタブレット端末を2015年の上半期中に法人向けへ提供していく。価格も現時点では未定だが、製造プロセスをそのまま利用できるのでそれほど割高にはならない。量産効果により価格も下がっていくだろう。コンシューマ向けは現時点ではまだ未定だが、本格的な量産体制が整う2017年ごろにはコンシューマ向けにも“当たり前の技術”にしたい」(同社)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.