スマートフォンやタブレット端末を中心に、無線通信を搭載した機器は急速に増えている。それに伴って、トラフィック量も爆発的に増大している。こうした状況から、SDR技術を用いて、周波数の利用効率をさらに改善していこうという動きが高まっている。それが5Gを開発する狙いでもある。
しかし、前述のように今のところ5Gの定義はあいまいで、「100Gバイト/秒のデータ通信能力を持った次世代無線通信」というのが、業界関係者の5Gに対する共通認識だという。瀧川氏は、5Gを実現する技術の候補として、4つの要素を挙げた。「新しい変調方式」や「MIMO技術」、「ミリ波など新たな周波数帯域の活用」、そして「アクセスポイントの高密度化」である(関連記事:ワイヤレス/RF市場のパラダイムシフトを支えるNI)。
5Gの研究開発者に対して日本NIは、PCと組み合わせてソフトウェア無線機を構成するためのハードウェア「NI USRP(Universal Software Radio Peripheral)」や、NI USRPにFPGAを搭載した「NI USRP RIO」を提供している。RF計測の動作を全てソフトウェアで定義することで、カスタマイズも容易に可能となる。
NI USRP RIOの特長は、FPGA「Xilinx Kintex-7シリーズ」を内蔵したことで、リアルタイム処理を行うための回路をハードウェアで実装できることだ。NI LabVIEW RIOをベースとしており、FPGAの他、50MHz〜6GHzの信号を送受信することができる2×2MIMOや、RFトランシーバをハードウェアで搭載している。
必要なソフトウェアは、システム開発ソフトウェア「LabVIEW」を使ってプログラムすることができる。「USRP RIOは、全ての信号処理をPCに任せるのではなく、内蔵したFPGAを用いてリアルタイムに信号処理が行える。しかも、FPGAの回路構成を含めて、プログラミングはLabVIEWを使った統合型ツールフローを構築できるため、アルゴリズムの実装や、システムの変更なども、複数の開発ツールを用いる場合に比べて比較的容易に行える」(瀧川氏)という。また、さまざまなリファレンス設計を同社のWebサイトにあるコミュニティよりダウンロードして利用することができる。
さらに、National Instruments(NI)が全世界で進めている5Gの共同研究について、ドイツのドレスデン工科大学や米ニューヨーク大学、スウェーデンのルンド大学などと取り組んでいる事例を紹介した。さらに、スタンフォード大学やテキサス大学といった主要大学で、次世代ワイヤレス通信の研究教材として、NIのソフトウェア無線ソリューションが用いられていることもパネルで紹介した。
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