ADASソリューション部の1/3が欧州のメンバーである意味は大きい。第一ソリューション事業本部 車載情報システム事業部の事業部長を務める鈴木正宏氏は、「ADASでは、日本や米国に比べて欧州は、はるかに進んでいる。ADASについてさまざまなコンセプトを考え、それを実現するためのタイムライン(いつまでに何をやる必要があるのか)を決める、いわば“技術的なトリガー”となっているのはやはり欧州だ。そういう意味で、ADASの動向をきちんと見るためには欧州に人がいなければならない。ただし、自動車がどこで売れるのか、(車載用マイコンなどの)数が出るのはどこなのか、というのはまた別の話になる。当社としては、欧州の先進的なポイントをきちんと見つつ、開発した製品をいかに市場規模が大きいところでグローバルに展開していくかが重要になる」と述べている。
さらに、ADASの要件は国や地域によってさまざまだ。「例えば、ADASのアプリケーションの1つにサラウンドビューがあるが、欧米では“危険なゾーン(モニターしたいゾーン)”として前方を気にする。だがアジアでは、それが後方になる。バイクなどがものすごいスピードで後ろから走ってきて、自動車のドアを開けた瞬間に、そのバイクがぶつかり大事故になる、といったケースもある」(鈴木氏)。Chouteau氏は、「ADASソリューション部ではグローバル性を生かし、まずはADASの要件を徹底的に理解する」と述べている。
ADASでは、コントロールとコンピューティングに加え、機能安全という非常に重要な要素が必要だ。ただし、データ処理能力と機能安全というのはトレードオフの関係にある。ルネサスの32ビットマイコン「RH850/P1x-Cシリーズ」などでは、自動車の機能安全規格ISO 26262で最も厳しい規定となるASIL Dに準拠可能になっている(関連記事:ルネサスが語る、クルマを安全に制御する車載マイコンの“技術の四隅”)。
Chouteau氏は、「データ処理を担うR-Carシリーズでも、ASILに対応するレベルを上げていきたい。第2世代のR-Car製品である『R-Car H2』ではASIL-Bに準拠可能になるが、第3世代R-Carでは、データ処理能力の向上とともに、機能安全への対応もASIL-CかASIL-Dに引き上げる計画だ。例えば、2025年には5万〜10万DMIPSの性能を備え、かつASIL-Dに対応可能なR-Carの投入を目指す。これを実現すべく、16nmプロセスへの移行、FinFETの採用、新アーキテクチャの採用などを進めていくことになるだろう。コントロールとコンピューティングの精度と性能を上げていくのはもちろんだが、機能安全については妥協しない」と説明した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.