富士通研究所は、監視カメラで撮影した低解像度の映像から、人の流れを認識することができる技術を開発した。この技術を活用することで、個人のプライバシーを侵害せずに、街中や施設内などにおいて、避難誘導や混雑解消などを容易に行うことが可能となる。
富士通研究所は2015年3月、監視カメラで撮影した低解像度の映像から、人の流れを認識することができる技術を開発したと発表した。この技術を活用することで、個人のプライバシーを侵害せずに、街中や施設内などにおいて、避難誘導や混雑解消などを容易に行うことが可能となる。同技術は2015年度中の実用化を目指している。
街中や商業施設内には、防犯などを目的とした監視カメラが数多く設置されている。これらの監視カメラは解像度が高くなり、人の顔なども明確に認識できるようになってきた。情報として単に人の流れを監視する用途では、個人を特定できるような高解像度のカメラ映像を用いると、逆に問題が生じる場合もある。
富士通研究所は、顔を判別することができないような低解像度の映像情報の中から、「人を検出する技術」と「人を対応付ける技術」を新たに開発した。これによって、個人のプライバシーを侵害することなく、人の流れを認識することが可能となった。
同社は、低解像度の映像から人を検出する技術として頭部に着目した。頭部はいずれの方向から見ても、形状がほぼ楕円形であり、人の上部にあるという特長を持つ。しかも、これらの特長点は低解像度でも比較的判別しやすい。
新たに開発した技術では、まず入力画像から頭部候補を抽出する。複数の形状が検出された場合には、頭部下にある胴体部分の画像を合わせて判別に用いることで、精度よく人を検出することができる。複数の人が重なり合って映っている場合は、人の前後関係を認識して、手前にいる人から順番に検出する。重なり合った部分を奥にいる人の胴体部分の検出に反映させることで、確実に人を検出することができるという。
もう1つは、複数の低解像度映像の中から、服装の色で人を対応付けする技術である。これによって、異なるカメラ映像からでも人の動きを認識することができるという。検出した人の服装の色から、特長的な色だけを選択して抽出することによって、低解像度の映像であっても安定した人の対応付けを可能とした。
同社は、今回開発した技術を用いて室内実験を行った結果、人の顔が特定できない低解像度の映像でも、約80%は人の追跡が可能になったという。これらの技術やそれで得られる情報は、商業施設店舗内における最適な品ぞろえや陳列方法、店員の配置、イベント開催時の混雑解消に向けた人の誘導、あるいは災害時の避難誘導などに活用できるとみている。
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