スーパーコンピュータ(スパコン)の性能ランキング「TOP500」の2014年11月版が発表された。首位は中国の「天河2号」で、日本の「京」は4位。順位の変動が少なく、PFLOPSレベルの性能を実現したシステムが増えたものの、全体的に性能の向上には鈍化の傾向が見られるという。
米国ルイジアナ州ニューオーリンズで開催されている「SuperComputing 2014(SC14)」で2014年11月17日、スーパーコンピュータの世界ランキング「TOP500」が発表された。今回の結果を見ると、順位の変動が少なく、性能の向上が鈍化傾向にあることが分かる。この傾向は少なくとも当面は続くと予想される。また、並列処理を強化するためのアクセラレータを搭載するシステムや、インターコネクトを10Gビットイーサネットに移行するシステムが増えていることも明らかになった。
10位にランクインしたのは、米国政府が導入したCrayの「CS-Storm」である。処理速度が3.57PFLOPS(ペタフロップス)で、今回発表されたランキングで唯一、新たにトップ10入りを果たした。富士通と理化学研究所(理研)が共同開発した「京」は4位で、ここ2年ほどあまり変動がない。
中国の「天河2号(Tianhe-2)」(処理速度33.86PFLOPS)は、2013年6月にトップ10にランクインして以降、首位を維持している(関連記事:スパコン性能ランキングは中国「天河2号」がトップ、「京」は4位)。天河2号は1万6000ノードで構成され、各ノードにはIntelのIvy Bridgeプロセッサ「Xeon」2基とコプロセッサ「Xeon Phi」3基が搭載されている。コア数は合計で312万に上る。
この他の8つのシステムは、2011年もしくは2012年にトップ10にランクインしており、トップ10記録を更新している。TOP500システムは全体的に、性能の向上が鈍化している。特に、過去2年間は史上最低の伸び率にとどまっている。TOP500リストの最下位システムの性能向上率は、1994〜2008年は90%を達成していたが、2008年以降は55%に落ちている。
ただ、リスト中の50システムが1PFLOPSを上回る性能を実現している。2014年6月の発表で、1PFLOPSを上回っていたのは37システムだった。PFLOPSの壁を最初に打ち破ったスーパーコンピュータが登場したのは、2008年である。
スーパーコンピュータの性能をエクサスケールに拡張した場合、現状のクラスタでは膨大なエネルギーを消費することになるため、研究者は新たな指標の必要性を訴えている。こうした状況にもかかわらず、IBMは先週、米国エネルギー省(DoE:Department of Energy)向けに処理速度が100PFLOSを上回るシステムを開発する契約を結んだと発表した。同システムは、IBMの「Power 8」プロセッサとNVIDIAのGPUを搭載するという。
今回発表されたTOP500の中で、75システムがアクセラレータを搭載している。NVIDIAのチップは、このうち50システムに搭載されている。Intelのx86系マルチコアコプロセッサ「Xeon Phi」は25システムに、AMDの「Radeon」は3システムに搭載されている。2014年6月に発表されたリストでは、アクセラレータを搭載するシステムは62だった。
Intelのプロセッサは、TOP500システムの85.8%に搭載されている。IBMの「Power」プロセッサは第2位ではあるが、そのシェアは8%でIntelとの差は大きい。3位のAMDのシェアは5.2%だ。イーサネットは依然として、クラスタのインターコネクトとして使われることが多いが、そのうち187システムはGビットイーサネット、88システムは10Gビットイーサネットを搭載する。InfiniBandを搭載するシステムは、2014年6月の221から増加し225だった。
今回のTOP500のリストでは、米国と中国のスーパーコンピュータの数が前回に比べてわずかに減っている。米国は233から231に、中国は76から61に減少した。米国と中国に続いてランクインしたスーパーコンピュータの数が多いのは、日本、英国、フランス、ドイツである。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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